東京五輪施設、現地を覆う「1年延期」の視界不良 本来なら2020年8月9日が閉会式だった…

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続いて、東京ゲートブリッジを渡って、葛西臨海公園に隣接する「カヌー・スラロームセンター」へ移動した。

「カヌー・スラロームセンター」は1年前にはなかった仮設の観覧席が設置されていた(写真:筆者撮影)

約73億円の総工費をかけて昨年7月に完成した際には、ラフティング体験会が行われるなど盛況を博し、カヌーのトップ選手もしばしば練習していた。

だが現在は、建設業者が必要に応じて出入りするくらい。海の森同様、柵に囲まれ、厳重警戒態勢が取られていた。

「3月に延期が決まってからずっとこの状態。警察が1日4~5回は巡回しています。五輪期間は観客で混雑し、ウチの大型車の出入りに支障が出るかと思いましたけど、その心配もなくなりました。1年後に五輪が開かれても、新型コロナの影響でそこまでお客さんを入れられるかわからない。先行きが見えないですね」。隣に事務所を構える運輸会社のスタッフは困惑気味に言う。

この施設も3億4900万円の年間維持費が見込まれている。光熱費の1億4500万円がかかっていない今年度はそこまでの金額にはならないだろうが、税金から億単位の費用が拠出されるのは確かだ。

大会後にラフティングやカヌー体験、水難救助訓練の研修など、新たなレジャー・教育施設として売り出す方向だった指定管理者・協栄も、先行きの不透明な現状に苦慮しているのではないか。

辰巳エリアも人影はまばら

閑散としているのは、辰巳の「東京アクアティクスセンター」も同じ。567億円という巨額費用を投じて建設され、今年3月22日にこけら落としイベント実施予定だったが、新型コロナの感染拡大によって中止。そのまま現在に至っている。こちらも柵に覆われ、一般人は立ち入り禁止だ。

アクアティクスセンターの開業に伴い、フィギュアやカーリング用のアイスリンクへの改修が決まっている「東京辰巳国際水泳場」も休館中。ただ、五輪延期によって9月末までの休館を8月20日に前倒しして、21日から利用できるようになった。

人影がまばらな「東京辰巳国際水泳場」(写真:筆者撮影)

本来なら五輪観戦客であふれかえっているはずだった今の時期も、人影がまばら。水泳目的で訪れる小学生などの姿もなく、運送業者らが行き交うばかりだった。

アクアティクスセンターの年間維持費は9億8800万円と試算されている。人件費や光熱費を削ったとしても、やはり1年延期で4億~5億円の追加コストがかかることになる。

すでに使える状態なのだから、前倒しで一般開放して、2021年から五輪準備に入るといった柔軟な活用法を取ればいいように思えるが、カヌー・スラロームセンターと同様、テロなどに備えて警備体制を厳重にしないといけない。そこが五輪施設の難しさだ。

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