日本の原発の「是非」今こそ議論の必要がある訳 グリーン・リカバリーのビジョンを描くために

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原発の再稼働のためには、安全性という大前提のもと、改めて国民の理解を求めなければいけない。福島原発事故は、日本の国体を揺るがすほど深刻な影響を及ぼし、原子力発電への国民の不信感を高めた。

日本原子力文化財団の世論調査によると、原子力を「信頼できない」と考える回答者は、2010年の10.2%から最大20%増加し2015年には30.0%を占めた(2019年は24.4%)。原子力が「必要」と考える回答者は、2010年の35.4%から最大20%近く減少し、2013年には14.8%となった。(2019年24.3%)。メディア各社の世論調査でも、原発の再稼働について「反対」が「賛成」を上回る結果が継続し、全体的に原発への国民の評価は低迷が続く。

10年の局面を迎える今こそ

福島原発事故後、民間や国会、政府、学会などの事故調がそれぞれ事故の原因を調査・検証し、提言を出してきた。発災後10年間で、事業者や政府、規制機関をはじめとする関係者たちがそれらの提言をどれほど活用し、実際の公共政策や運用に還元してきたか、10年の局面を迎える今こそ改めて俎上に載せ、国民に提示し、合意を得る努力をする必要がある。


加えて、原子力の低炭素価値を改めて評価することによって、原子力の価格競争力を高める制度は、検討の価値がある。原子力の低炭素価値を評価する動きは、 日本国内ではほとんど盛り上がっていないが、例えばニューヨーク州やイリノイ州では、2016年「ゼロ・エミッション証書(Zero Emission Credits)(ZEC)」制度を創設し、原発の運転継続を支援する措置を取った。

この制度により、原発はゼロ・エミッション電源としての対価を電気料金の中から受け取ることができる。行政が原子力の特殊性をカバーする政策的措置、すなわち低炭素電源の価値を経済的に評価する制度を導入したことで、原子力の市場競争力を高め、運転を継続することができた。

気候変動は先送りできない問題であり、新型コロナウイルスからの経済復興と同時並行で取り組まなければならない。そのためには、今こそ原子力の価値を評価し、向き合うことが求められる。日本にとっての原子力の位置づけを明確にしてこそ、日本のグリーン・リカバリーの長期的なビジョンが描かれよう。

(柴田 なるみ/アジア・パシフィック・イニシアティブ プログラム・オフィサー)

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『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

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