フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略 クリス・アンダーソン著/小林弘人監修/高橋則明訳~潤沢なものはフリーに希少なものはより高く

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略 クリス・アンダーソン著/小林弘人監修/高橋則明訳~潤沢なものはフリーに希少なものはより高く

評者 黒田康史 YSコンサルティング代表

「ロングテール」で一躍有名になったクリス・アンダーソンの最新作だ。本書もまた、ネットの可能性を示しているという点では大変興味深い内容だ。

何より印象的なのは、「フリー(無料)」の周辺でいくらでもカネを稼ぐ方法があるという指摘だ。フリーにすることで評判や注目を集められることを活かして、潤沢なものはフリーにし、その近くで希少なものを見つければ、喜んで高いカネを払ってくれる人がいると説く。

本書によると、フリーには大別して4種類ある。今注目のフリーミアム、つまりフリーによって人をひきつけ、有償のバージョン違いを用意するフリーもその一つだ。

本書では、過去のフリーの歴史を振り返ったうえで、現在のネットを利用したフリーは、アトムの世界ではなくビットの世界の話で、根本的に異質なものとしている。ビットの世界では限界費用が限りなくゼロに近づき、フリーは必然となってくるからだ。

本書はまた、フリーを恐れるのではなく、うまく利用すれば有料を活かせると主張する。不正コピーがその好例で、それは止められないものと割り切り、むしろ潜在顧客が増えることを喜び、うまく利用することが大切と説く。

最近、どの業界も構造改革が必要になっているが、本書を読めば、そこにフリーの影響が少なからずあることがわかるはずだ。

著者も指摘しているように、本書の内容については賛否両論あるだろう。しかし大切なことは、ネットの普及は世の中を根本から変えつつあり、今までのやり方では通用せず、新しいやり方が必要であることをしっかり認識することだ。この点、本書は刺激的で、さまざまな考えを膨らませる糸口になる。

Chris Anderson
『ワイアード』誌編集長。米国ジョージ・ワシントン大学で物理学の学位を取得、量子力学と科学ジャーナリズムをカリフォルニア大学バークレー校で学ぶ。ロス・アラモス研究所の調査員を務めたあと、『ネイチャー』誌と『サイエンス』誌に6年間勤務。著書『ロングテール』は世界的ベストセラーとなる。

日本放送出版協会 1890円 352ページ

  

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