中国から「謎の種が届く事件」を解く有力な推理 不正レビューが成立するための巧妙なカラクリ

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そしておそらくベトナムの港湾か空港の内部に不正業者の協力者がいる。ベトナムの郵便局で発送処理をした郵便物はその後のどこかのタイミングで中国郵政の偽造ラベルに貼りかえられ、中国発の郵便物の貨物に入れ替わるのではないかというのです。

日本の税関も日本郵便も中国郵政のラベルのついた郵便物をまさかラベルが偽造されているとは気づかずに実在する日本の住所に配達する。ベトナムから65円で発送されたただ同然の種を中国からの郵便物として日本の何の関係もない人宛に配達するのです。

そして配達が完了した記録が残ると、それがアメリカの大手通販サイトには配達完了と認識される。まさか登録されたアカウントとはまったく別住所に届いたとは気づかずに、大手通販サイトは購入した(ことになっている)架空アカウントのレビュアーにレビューの書き込みを許可するようになります。

コストは種の原価と65円の郵便代と協力費

それで不正業者は架空アカウント名で依頼業者の商品に堂々と高評価のレビューを書き込むことができるようになる。コストは種の原価と65円の郵便代とそして内通者に支払う協力費だけということになります。

以上が私の聞いた話の概要です。

この仕組みの解明はあくまで業界に詳しい人による推理でしかありません。とはいえ私が理解した限りでいえば「種が送り付けられてくる理由」をいちばん論理的に説明してくれる仕組みのように思えます。

植物防疫法の規定により、植物防疫官による検査を受けなければ、種子などの植物は輸入ができないことから、植物防疫所のホームページでは、「海外から注文していない植物が郵送された場合は、植物防疫所にご相談ください」と案内しています。もし種が届いたら植物防疫所へ通報する必要があります。

【2020年8月6日17時43分追記】初出時の「種は捨ててしまえばよい」との記述を植物防疫法の規定にのっとって、上記のように修正しました。ご注意ください。

そうだとしたら種自体についてはこれ以上問題にすることはないかもしれません。ただし注意は必要です。おそらく大手通販会社側もこの件の対策を講じるようになるでしょうし、不正業者側も何らかの新しい対抗策を練るでしょう。だとすれば次は手口が変わってくる可能性もあります。そして私たち消費者は偽のレビューに騙されてしまう。ですから本当に警戒が必要なのは種ではなくネット通販で売られている商品の品質だということなのです。

【2020年8月4日18時05分追記】初出時、ベトナムからの郵便料金の記述に一部不正確な部分があり修正しました。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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