「ゲーム脳の信憑性」を現役医師が怪しむ理由 「脳の活動を低下させる」とまでは言い切れない
「私としてはマナーやルールとしていうべきであって、国や県が条例などの法律で縛るまでのことではないかなと思っています。同時に、もし条例などにする場合は、子どもからビデオゲームを取り上げることになるのですから、そのほかに遊べる場所などを用意しなければダメだと思います」
別の論点もある。「60分」の根拠は何なのか、というものだ。
香川県高松市に住む高校3年生男子が、「1日に数時間オンラインゲームを楽しんでいるが、それが原因で不登校になったことはない。自分以上のゲーマーには勉強が得意な人だっている」と主張。県を相手取り同条例の違憲訴訟を高松地裁に起こす予定だ。
ここまで述べてきたように、ゲームによって人生が豊かになったと考えている私自身、この条例は「ゲーム=悪」という結論ありきでスタートしたものに思えてならない。一方で、選挙で選ばれた県議会議員たちが条例案を可決したという事実を重く受け止めなくてはならない。
本当にゲームは「危険」なものなのか?
必要なのは、科学的根拠に基づいた冷静な議論だと思う。「ゲームのどのようなところに、ハマりすぎる危険があるのか」「ゲームとどう付き合えば、楽しく健康的にプレイできるのか」――そうした問いに、最新の医学はどこまで答えられるのか。当然、かつては“常識”だったことが、のちの研究や検証で“間違い”だと判明していることもある。
「ゲームが人体に与える影響」について、さまざまな疑問を専門家である医師に聞いていく。
香川県は、なぜ「60分=1時間」以上はダメと決めたのか。
その根拠とするのは、香川県教委などが県内の小中学生を対象に勉強時間と学力の関係を調べた「アンケート」であり、1時間以上プレイすると子どもの脳のはたらきが低下するといったことを明らかにする医学的な根拠は示されていない。
ちなみに、前述のように高橋名人が「ゲームは1日1時間」を世に広めたわけだが、そのことについて彼はブログ内で「そのときに閃いた言い回しで、まったく根拠はありません」としている。
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