「ゲーム脳の信憑性」を現役医師が怪しむ理由

「脳の活動を低下させる」とまでは言い切れない

どこから「60分」という数字が生まれたのか――香川県に問い合わせると、「複数の調査を参考に、家庭でのルールづくりの目安として規定した」(香川県議会事務局政務調査課)との回答。明確な線引きの根拠があるわけではないらしい。

医師が語る「長時間プレイ」のデメリット

では、専門家はこの条例の内容をどうみるのか。脳の機能に詳しい神奈川歯科大学附属病院認知症・高齢者総合内科の眞鍋雄太教授に聞いた。

「少なくとも私が知る限り、『60分』という数字を分岐点とすることに医学的な根拠はありません。目安には違いないでしょう。『ゲームにハマりすぎて生活が壊れてしまう人がいる』というのは紛れもない事実ですが、最新の医学で『ゲーム依存が起きる原因』について、すべてが解明されているわけではありません。わかっていることとしては、『ゲーム依存の陥りやすさは人それぞれ』ということと、『発達障害など特定の疾患を抱える人はゲーム依存になりやすい可能性がある』ということくらいです。

『60分』に根拠がない一方で、私は『時間を区切る』ということ自体には賛成です。脳の構造上、人間は時間で区切られないと、楽しいことから離れられなくなり、没頭してしまいます。そうなると睡眠が削られます。睡眠を取らないと、記憶力が低下したり、認知症やうつ病などのリスクが増え、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなったりする。子どもについていえば、成長ホルモンが出にくくなってしまい、低身長になるなど成長を妨げてしまいます。きちんと時間を区切ってゲームを遊んでいるのなら、しゃくし定規に『60分まで』と決める必要はないと思っています」

疑問2:「ゲーム脳」とは何なのか?

ゲーム依存の話題になると、よく耳にするのが「ゲーム脳」という言葉だ。これは、2002年7月に刊行された『ゲーム脳の恐怖』(森昭雄著、NHK出版)で初めて使用された造語である。

「ゲーム脳」とは、どのような状態を指すのか。同書では次のように述べられている。

〈テレビゲームを長期間おこなっている人の脳波が、重い痴呆(筆者注・認知症)の人の脳波にたいへん類似していることがわかりました。(中略)重症になるとゲームをやめても、もとに戻らなくなります。また、さらに重症な人は、ゲームをやっていない時でも、痴呆者と同じような脳波を示します〉

「ゲーム脳」になってしまった人の特徴は、こう記されている。

〈この人たちは、ほとんど会話をせず1日を過ごすパターンでした。コミュニケーションがほとんどなく、昼休みもひとりで弁当を食べるだけです〉
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