なぜ名経営者は紙ナプキンに図を描くのか? 思考をアップグレードさせる「図を描く習慣」

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PPMは、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(Product Portfolio Management)の略で、とても豊かに大事なことを表現する力を持った図です。どの事業からキャッシュを生み出し、どの新規事業を育てるべきか。こういった経営課題を議論するための枠組みです。

「金のなる木」にある事業は、シェアが高くて市場はもう成熟しているのでキャッシュを生み出しているはず。その儲けたキャッシュを「問題児」にある事業(今は弱いけど、市場は伸びていて魅力的)に投入してスターにしよう。スターになれば、市場が成熟したとき、その事業は「金のなる木」になる。そうしたら、そこから生まれるキャッシュを再び「問題児」に……という「循環の戦略論」を、このPPMの図は表現しているのです。

なんとまあ豊かな図なのでしょう。

今では多くの人がPPMを知っていると思います。でも30年前はとても新鮮な全社戦略の考え方でした。

そして、何億、何十億円のビジネスが、こうした図を描いて検討され、ジャッジされていることに、当時は正直かなり感動したものです。

世界の名経営者たちも図で考えている

私の経験談だけでは説得力がありませんので(笑)、ここで、図を描いて事業を構想・ジャッジし、ビジネスを成功させた2人の世界的経営者をご紹介しましょう。

1人目はアマゾンの創業者、ジェフ・ベゾス。彼は創業後間もない頃、アマゾンのビジネスモデルの原点とも言えるべき図を紙ナプキンの上に描いたと言われています。ここで描かれたビジネスモデルによって、アマゾンは時価総額約1兆ドル(2020年1月)の事業へと成長しました。

(画像出所:Amazon.jobsHPより)

ゼネラル・エレクトリック(GE)を再建させたジャック・ウェルチもそうです。彼は1980年代初め、大企業病に陥り、業績が悪化していたGEのCEOに就任しました。当時のGEのビジネスは非常に多岐にわたり、経営資源が分散し、どれも中途半端でうまくいかない状況に陥っていました。

彼が試みたGEの立て直しは、その状況を根本から見直し、構造を変えようとするものでした。有名な「No.1、No.2戦略」です。このアイデアは、夫人とレストランで食事をしているときに着想し、紙ナプキンの上に描かれたと言われています。

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