コロナ移住、結局「首都圏近郊」が人気なワケ 現実的に考えると地方移住のハードルは高い

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新居の賃料は60㎡余の3LDKで8万円。久里浜でも駅周辺は同程度の広さで12万~13万円というが、駅から離れるとがくっと下がる。これまで住んできた川崎、中目黒の賃料は17万~22万円ほどで、㎡単価は最も高かった中目黒の4000円から1200円に下がったという。 

横須賀市は、鎌倉など湘南エリアに比べて賃貸料が安いことも決め手となった(写真:筆者撮影)

ただ、探してみてわかったのは、郊外では賃貸住宅の選択肢は非常に限られること。単身者向き以外の賃貸住宅自体がないエリアもある。小田氏の場合はたまたま出た分譲賃貸に決めたが、そもそも分譲マンションが供給されていない地域ではそれすらもない。

以前の45㎡2DKからすると広くなり、夫婦共用の書斎が作れたのはよかったが、海側に設けた書斎は窓を開けると砂が入り、コンピューターにはよろしくない環境。海辺特有の湿っぽさも経験しなければわからなかった。物価は安く、魚や野菜も美味しく、海が近くにあっていつでも散策できる環境はこれまでの仕事最優先の暮らしを一変させたが、一方で「戦闘力が下がる」とも感じている。

家族と一緒のリゾート地でのワーケーションでは必死になりようがなく、やる気持続のためにはその地の高度人材と交わる場、その他仕事の空気が流れている場を作る必要があると感じたという。

夜9時に駅を降りるとほとんどの店が閉店しており、終バスが平日で10時半と夜が早いため、夜遊びが好きな人には不向きかもしれないが、小田氏にはあまり影響がない。ただ、夜道が無人で歩いての帰宅は不安で、バス便の本数がないことから自転車を購入した。

それ以外ではゴミの分別が面倒、坂道が多くて移動が大変、自然が身近で津波などの危険をリアルに感じるなど感じることはいろいろあるが、これまでより長く住むつもりだという。

都内の戸建から湘南の戸建購入へ

都心勤務の夫+妻と子どもの場合

以前から東京に住む意味をあまり感じていなかったというS氏は子どもが幼稚園に入るタイミングでの住み替えを計画。昨年来物件を見学するなど住まい探しをしていた。そこにコロナが到来し、在宅勤務が始まったことで以前からの考えが明確になったという。

「地方の出身で、人の多い東京より、海や自然のある場所で子育てをしたいと思っていました。それで昨年から湘南エリアで物件を見学。コロナでほかの人も、物件も動いていない時期だったためでしょうか、以前見た物件の価格が下がり、それで購入を決めました」

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