また、毎日の満員電車ストレスから解放される経験をした人の中には、通勤に対する考え方が変わった人も多い。週に1、2日通勤するだけなら、通勤時間が長くなっても他の条件を優先するというニーズの変化も生じている。
テレワークで、在宅勤務を経験しただけでなく、緊急事態宣言中の約2カ月の外出自粛で「おうち時間」や「わが街時間」が増加したことも、住まい観を変える要因になっている。家族と家で過ごす時間が増えたことで発生した間取りのニーズ、在宅時間が長いことで発生した住宅の性能へのニーズ、住む街を長く周遊したことで発生した街ニーズといった、さまざまなニーズがそれぞれの家庭の事情によって発生している。つまり、ニーズの「多様化」が生じているのだ。
個室・部屋数志向に変化
まず間取りのニーズについて、旭化成ホームズの「在宅ワークに関するくらしの変化についての調査結果」を紹介しよう。自宅のどこで在宅ワークをしたかを個室派とLD派に分けて聞いている。
持ち家の一戸建て:個室派54% LD派41%
賃貸の集合住宅:LD派71% 個室派27%
在宅ワークを実際にした場所は、持ち家の一戸建てでは個室派が多いが、賃貸の集合住宅ではLD派が7割を占める。この違いは、個室を確保できるかどうかがカギになった可能性が高い。持ち家の一戸建てが総じて床面積が広く、部屋数が多いことから、個室を確保しやすい環境にある。個室があればそこで在宅ワークをするという人も多いのだろう。
次に、ミサワホーム総合研究所の「新型コロナウイルス影響下における住まいの意識調査レポート」を見よう。「今後住まいで取り入れたい要素」として、在宅空間では次のような結果になっている。
・「4畳半程度の個室」62.4%(29.5%)
・「2畳程度の最小限の個室」50.4%(20.9%)
・「リビングやダイニング横などにカウンター設置」52.5%(18.9%)
・「部屋を間仕切りして一時的にスペース確保」49.5%(17.1%)
・「1ヶ所ではなく複数ヶ所」48.9%(18.1%)
※「取り入れたい」+「やや取り入れたい」の合計で( )内は「取り入れたい」の比率
「4畳半程度の個室」ニーズが最も高いが、「2畳程度の最小限の個室」でもいいから、個室がほしいという人も多い。この結果を見ると、仕事に集中できる個室ニーズが強まっていることがうかがえる。
一方、仕事をするのはLD派という人は、リビングやダイニングにカウンターがほしいようだ。とくに子供のいる女性は、仕事の合間に家事をしたり、仕事をしながら子供の様子を見たりできるLD派が多いことがわかっている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら