コロナ禍で「住まい探しの条件」が変化する背景 在宅勤務が物件選びにも大きく影響している

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在宅勤務が長期化することで住まいの性能へのニーズも高まる。とくに音の問題が気になるようになって、賃貸住宅の騒音クレームが増加したという話もあるようだ。リブランの防音賃貸マンション「ミュージション」は、楽器の演奏をしたりサラウンドで映像鑑賞をする人などを対象にしているが、緊急事態宣言中は入居希望者からの問い合わせが、前年より4月は3.6倍、5月は2.3倍に増加したという。

リブランによると、コロナ禍で在宅勤務をしている際に周囲からの音が気になるようになり、自分の演奏なども周囲に聞こえて迷惑をかけているかもしれないと考え、防音マンションへの住み替えを検討した人も多いそうだ。

緊急事態宣言解除後に感染者が増加した今は、再び外出自粛や在宅勤務が求められているが、これから在宅時間が長くなると暑さ対策としての住宅の断熱性能も注目されるようになる。加えて、感染予防対策として、住宅内の換気機能も大きな課題となってくる。

このように今後の住まい選びでは、遮音性能、断熱性能、換気機能などの住宅の基本性能に対しても重視度が高まると考えられる。

住まいのニーズはますます多様化する

さて、「働き方」でテレワークやリモート会議が増えたり、オフィスの場所が地方や郊外のサテライトオフィス、フリーアドレスの多拠点オフィスなどに移ったりすれば、「暮らし方」も変わる。在宅時間やわが街で過ごす時間が増加し、家族との関係も変化すれば、暮らしの場となる住まいの選び方も変わってくる。

その一方で、働き方が以前と変わらない職種や勤務先の家庭も多いし、共働きなどの理由で交通・生活利便性を重視せざるをえない家庭も多い。さらに、住まい選びでは、何よりも資産性を重視するという人もいるだろう。

withコロナで住まい選びの条件が一気に変わることはないだろうが、家庭それぞれの事情や価値観によって、その家庭ならではのニーズによる希望条件の多様化が起こるのではないかと思う次第だ。後編では、こうした住まいへのニーズを反映した住宅各社の提案を紹介する。

山本 久美子 住宅ジャーナリスト

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やまもと くみこ / Kumiko Yamamoto

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「All About(最新住宅キーワードガイド)」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を有す。

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