半沢直樹の「上戸彩」が良い感じに浮いている訳 女優の自分を客観視し、子育てと両立する強さ
そこに「お花の教室の奥様たち、『どの株が上がるのかしら。お宅のご主人詳しいんでしょ』なんてしつこく聞かれて困ってるの。ねえ、どの株が上がるの?」と花が声をかけました。
半沢が「それは俺が聴きたいな」といなしつつ、「株の値段には金額だけでは表せない人の思いが詰まってる。儲かるかどうかじゃなくて、好きになるかどうかで選んだほうがいいよ。ラブレターを送りたくなるような会社をね」と熱弁すると、「良く言うよ、ラブレターなんてもらったことないくせに……(無反応の半沢を見て)エッ?あるの?ラブレターだよ。ねえねえ、どんな内容?」と思わず嫉妬してしまうほほえましいシーンでした。
どちらも「花は思ったことを率直に話し続け、それを半沢が素直に聞き入れる」というシーンであり、「正反対の性格だからこそ相性がいい」という夫婦像が見えてきます。
半沢直樹が唯一勝てない相手が花
どちらも証券会社や銀行とは、ほとんど関係のないシーンであり、だからこそ半沢にとって花の存在は癒しであり、視聴者にとってはひと息つけるタイミング。仕事中は険しい顔の半沢が家に帰ると穏やかな顔になり、上司を呼び捨てにする半沢が「花ちゃん」と目尻を下げていることからも、夫婦の時間に癒されている様子が伝わってきます。制作サイドは、「夫婦のシーンで半沢の人間味やパワーの源を感じてもらおう」としているのです。
たとえるなら、シリアスなビジネスのシーンは剛速球のようなもの。しかし、豪速球でも投げ続けていると目が慣れて凄さが薄れてしまうように、シリアスなシーンも続けるほど視聴者がそれに慣れてハラハラドキドキしなくなってしまいます。
だからこそドラマにはひと息つけるスローカーブのようなシーンが必要であり、他の作品でも主人公が立ち寄る居酒屋、バー、カフェなどのシーンをはさむのが定番。「半沢直樹」では半沢と花のやり取りが、そのスローカーブに当たり、「このシーンはいらない」と否定的な声をあげている人も、それを見ることでシリアスなビジネスのシーンをより楽しめていることに気づいていないだけなのです。
また、「花は銀行マンや証券マンの妻には見えない」という声もありますが、それこそが制作サイドと上戸さんの狙い。花は優しく背中を押すタイプではなく、明るく背中を叩くタイプの女性であり、あまり考えずに言いたいことを言ってしまう天性の明るさが半沢の救いになっているのです。
頭が良く弁の立つ半沢が唯一、「かなわない」と思っているのが花。ステイタスの高いビジネスパーソンたちと戦い、必ず勝利を収める半沢にも「実は勝てない人がいる」ことが人間味を感じさせるなど、妻が夫の魅力を引き出しているのです。
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