半沢直樹の「上戸彩」が良い感じに浮いている訳 女優の自分を客観視し、子育てと両立する強さ
実は続編ドラマの原作小説『ロスジェネの逆襲』に花は登場しません。それでもわざわざ脚本に組み込んだ理由は、「作品のバランスを考えたから」「半沢とのやり取りが好評だったから」の2点。小説よりも見る人の幅が広く、数も多いドラマでは、シリアス一辺倒にならないバランス感覚が重要であり、多少のアンチを気にするよりも既存ファンの期待に応えようとする姿勢が求められます。
あえてビジネスパートの台本を読まない理由
次に演技を含む上戸彩さんの仕事ぶりに対する誤解を解いていきましょう。
上戸さんの演技を疑問視し、「1人だけ浮いている」と指摘する声がありますが、彼女も演出家も、あえて物語の中から浮いたキャラクターを作っているのです。前述したように、花の登場シーンはシリアスなビジネスシーンを際立たせるためのアクセントであり、半沢が唯一かなわない人。つまり、浮いているくらいのほうがフィットするのです。
しかし、この「1人だけ浮いている」というキャラクターの演技は、視聴者が思っている以上にそのさじ加減が難しいもの。やり過ぎても物足りなくても、「邪魔」「中途半端」などと言われがちな役柄であり、演じるのが上戸さんでなくても批判の声は挙がっていたでしょう。
上戸さんはそんな実は難しい役を演じるにあたって、花の視点を大切にするために、「台本は自分の出番だけを読んで、ビジネスパートを読まないようにしている」そうです。専業主婦の花は半沢の仕事詳細を知らないだけに、上戸さんは同じ状態で撮影に臨み、だからあのような明るく元気で能天気なキャラクターを迷いなく演じられるのでしょう。
そんな明るく元気で能天気な花を上戸さんは、「自分に凄く似ている」とコメントしていました。実際、上戸さんは演技の技術以上に、天性の明るさや元気を視聴者に伝えられる稀有な女優。それらを伝えられるのは、「全力で演じたい」と口グセのように話すなど、スタッフや視聴者の期待に応えようとする一生懸命さがあるからで、演技力以前の姿勢で引きつけられる女優なのです。
あらためて上戸さんの女優業を振り返ると、15歳の2000年に出演したデビュー作「涙をふいて」(フジテレビ系)では、父を火事で失い、母は意識不明の重体となる中学生という複雑な役柄を演じました。しかも同作は「もう1つの『ひとつ屋根の下』」と言われる隠れた名作。主演の江口洋介さん、内田有紀さん、いしだあゆみさん、いかりや長介さんらに加えて、兄弟役に二宮和也さん、神木隆之介さんなど、デビュー作から名優たちと共演していたのです。
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