それでもすきま風の安倍・オバマ ほど遠い個人的信頼関係

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安倍首相にとって、今回のオバマ大統領来日は今年前半の最大の政治イベントだった。

過去の日米トップの政治ショーでは、まず安倍首相の祖父の岸首相だ。1957年、訪米してアイゼンハワー大統領とゴルフした後、全裸で一緒にシャワーを浴び、「裸の付き合い」と自賛した。
 中曽根首相は83年、レーガン大統領を都下日の出町の自分の山荘に連れていって囲炉裏を囲んだ。「ヨーロッパ人はシャトーでないとダメなんですが、アメリカ人は牧場でいい……田舎に連れていってもいいだろうと思った」と回顧している(著書『天地有情』)。 もう一人、2006年に訪米した小泉首相は、ブッシュ大統領とメンフィスのエルビス・プレスリー邸を訪ね、サングラス姿でギターを弾く真似をして話題を呼んだ。

今回、安倍首相は銀座の寿司店のカウンターでオバマ大統領と並んで寿司をつまみ、親密ぶりを演出したが、2人だけの「サシの時間」は実現しなかった。
 安倍外交は、トルコの大統領やオーストラリアの首相、ロシアの大統領らとの接触の仕方からもうかがえるように、首脳同士の「個人的信頼関係」の構築が基本戦略のようだ。その点では、対オバマ作戦は不調に終わったと見られる。
 万事がビジネスライクのオバマ大統領のマイペースを崩せなかったのも事実だが、両者の間の「すき間風」は解消していないという評も多い。

オバマ来日で、去年暮れの靖国参拝による日米の亀裂を修復し、関係強化を図るのが安倍首相の狙いだった。「尖閣に日米安保条約適用」という大統領の公式発言を引き出したが、個人的信頼関係では「岸・アイク」「ロン・ヤス」「小泉・ブッシュ」には程遠い。

相手が民主党の大統領という違いもあるだろう。
 だが、首脳会談で「日米は価値観共有」と釘を刺したオバマ大統領は、いまも「歴史修正主義」という安倍首相への懸念を払拭し切っていないのかもしれない。日本国民の多数が「戦後の世界秩序」や「民主主義・自由社会」を否定する考えに与しているとは思えない。
 懸念はアメリカ側の誤解、と安倍首相が言うのであれば、内外に向けて修正主義否認を明確に打ち出すべきである。

(撮影:尾形文繁)

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