第一三共、アストラゼネカと提携深化の可否 がん治療薬を強化、開発のスピードアップも
国内製薬大手の第一三共は7月27日、同社が開発を進めるがん治療薬候補「DS-1062」の開発と販売で、イギリスの製薬大手アストラゼネカと提携することを発表した。
第一三共がアストラゼネカから最大60億ドル(約6300億円)を受け取る大型の契約だ。まずは契約一時金で10億ドル。さらに開発の進捗に応じて10億ドルを受け取り、製品が発売された後、一定の売上高を達成するごとに最大で40億ドルを受け取る内容だ。
時価総額は製薬2位に
第一三共にとってこの提携の意義は大きい。1つは、契約金の60億ドルとは別に、今後の開発費を両社で折半できることだ。DS-1062はまだ開発の初期段階にある。開発が進むほどに開発費は膨らむが、その負担を軽減できる。加えて発売後には、複数の大型がん治療薬を海外で展開しているアストラゼネカの営業網を活用して海外販売できる。
提携発表翌日、第一三共の株価は10%急騰し、時価総額は6兆7000億円を超えた。それまで6兆円前後で競っていた武田薬品工業を引き離し、製薬業界では2位に躍り出た(トップは中外製薬の約8兆円)。
第一三共とアストラゼネカは2019年3月、がん治療薬「エンハーツ」で提携を結んでいる。今回提携に至ったDS-1062と同じ技術を活用して開発された薬剤で、提携のスキームもエンハーツとほぼ同じだ。
エンハーツは当局への申請前のタイミングでの提携だったのに対し、今回はそれより早い臨床試験の初期段階で提携にこぎ着けた。モルガン・スタンレーMUFG証券の村岡真一郎アナリストは「まだ第1フェーズにもかかわらず、薬剤候補としての質の高さがアストラゼネカから評価されたことは大きい」と語る。
エンハーツは2020年1月にアメリカで、5月には日本で乳がん治療薬として発売された。臨床試験の段階から成績が良好だったことから、発売初年度となる2021年3月期から285億円の売上高を見込むなど、初速は好調だ。売上高1000億円超えが大型薬の目安である業界にあって、2025年には売上高が6000億円を超えるともいわれており、大きな期待がかかっている。
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