オンライン就活でも重い「ミスマッチ」の大難題 企業と学生が「お互いに不幸」とならないために
新型コロナウイルスの感染拡大が完全に終わる気配はない。この前例なき事態を前に、プレシャスパートナーズでは、今年4月の相談件数が前月比で20倍ほどにもなったという。担当者はこう続けた。
「『例年のインターンでは現場見学をやっていたが、オンラインでどうすればいいか?』という相談をしてきた建設会社もありました。ほとんどは『オンラインをどう活用すればいいか?』という内容です。多くの企業が『オンラインで自社の雰囲気をどう伝えたらいいのか?』という解決策を探しています」
情報格差で学生が不利に
採用のミスマッチはコロナ以前からの大きな課題だった。厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」が示す大卒就職者の離職率(3年以内)は、を2018年3月卒業者で32.0%。1999年からこれまで30%前後と横ばいだ。
月間約100万人の利用があるという就活口コミサイトを運営するワンキャリア社(東京)によると、離職原因の大半は「仕事とのミスマッチ」だ。社風や社員の人柄、仕事内容などへの不満を理由に若者は離れていく。
同社経営企画室の寺口浩大氏は、ミスマッチについて次のように話す。
「学生自身がその企業をよく知り、納得できたかどうか、です。それがないと、ミスマッチになる。学生個人の意思決定が高いレベルでできるようになったら、ミスマッチは少なくなるのでは」
「でも、今の学生は置き去りに遭っている。情報格差がひどいんです。企業が出す情報は、お金が絡んで美化されているし、ネット上では本当かどうか疑わしい情報が氾濫している。学生はそもそも、何を信用していいのかわからない状況にいるんです」
経団連の正木義久・労働政策本部長(取材時)は「ミスマッチはお互いに不幸」と言い、企業側が目指すべき方向を次のように語った。
「今までの採用方式は成功してきたが、今はもう……。だからこそ、ありのままの企業像を学生に理解してもらう場が必要です。互いの円満なコミュニケーションには、例えば、長期インターンシップなどがいいかもしれない。短期は意味がないと思います」
従来の一括採用や長期・終身雇用制度を前提とした「メンバーシップ採用モデル」では限界がある、との認識だ。そのため、今後はエンゲージメントを重視するよう呼びかけているという。企業と社員との間で、賃金以外の結びつきを強化しようという方向性だ。
「採用活動でもエンゲージメントは重要だと思います。企業からは『卒業証書にこだわりすぎていた』との声が出ている。欲しい人材像をもっと明確にしなければ、と。そもそも企業側が変わらないと改革はできないので」
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