職場でタバコ、酒、セクハラは日常茶飯事!?

60年代の職場は、「男のディズニーランド」か

新顔の秘書を「誰が最初に落とすか」競う男性たち

アメリカの60年代初頭といえば、景気がうなぎ上りだった時代。本作の舞台となっているニューヨークのマンハッタン、とりわけ広告会社が林立するマディソン通りに陣取る業界一、ニを争う代理店の生え抜きたちともなれば、飛ぶ鳥を落とさんばかりの勢いでブイブイ(死語か)言わせていたに違いない。

ちなみに、劇中ではお腹の大きな妊婦もたばこを吸い、妊娠中でもバーで酒をたしなむシーンが登場する。女性としては、ギョッとしてしまうが、当時はよくある光景だったわけで、たとえば同時代を描いたミュージカル映画『ヘアスプレー』などでも、妊婦の飲酒、喫煙シーンは登場する。

だが、それ以上に引っかかるのが、オフィスでの女性に対するセクハラ行為だ。新顔の秘書が入ってくると必ず男性陣がランチに誘い、「誰が最初に落とすか」を露骨に競い合う。職場で他人の目も気にせず女子社員を男性が膝に乗っけてイチャイチャしたり、オフィス内の情事や不倫も日常茶飯事。セックスが仕事と密接にかかわっているのも、やはりこの時代の特徴なのか、あるいは業界的なものなのかはわからないが、愛人のひとりぐらいいるのが、男の甲斐性とでも言わんばかりである。

したたかに、痛々しく、努力してきた女性たち

やり手の秘書ジョーンと、男性社員

一方、会社のやり手の秘書ジョーン(クリスティーナ・ヘンドリックス)や新米秘書ペギー(エリザベス・モス)は、そうした男性たちに利用されている部分もあるが、同時に女は女のしたたかさを発揮しているので、一方的な被害者、弱い存在として描かれているわけではない。ジョーンがペギーに対して、「秘書っていうよりは、母親とウエートレスの中間を求められることが多いわ」というセリフには、思わず納得しつつ苦笑い。

ペギーはこの時代に台頭したウーマンリブの象徴でもあり、後にコピーライターとして才能を発揮していく。その野心と上昇志向は男性に負けず劣らず非常に強い。本作には野心満々で、物怖じせず男たちと対等に渡り合う女性も登場するが、「ここはアメリカよ? 成功を目指して勝者にならなきゃ」なんてセリフをドンに言うくだりがあって、ニヤリとさせられる。

ペギーの戦いは始まったばかりで、同僚の男性陣からのけ者にされたり、無理やり、彼らの世界に合わせてストリップクラブへ乗り込み、ベテラン社員の男性の膝に乗せられて酒を飲む姿などは痛々しいものがある。だが、こうした女性たちの努力があってこそ、女性の社会進出は可能になったのかと思うと、筆者はむむぅと考え込んでしまうのだった。

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