原油価格が再び「逆戻りする懸念」が出てきた 夏なのに需要は思ったほど回復していない
そうであれば、日量190万バレルの増産になる今回の決定が市場に及ぼす影響は、やはり無視することはできない。
世界経済は5月以降、確かに回復基調にある。だが、新型コロナの感染が拡大する以前と比べれば、まだまだ落ち込んだままだ。加えてここへきて米南部の州を中心に感染が再拡大する傾向にあり、再び経済活動を制限する方向に動いていることを考えれば、OPECプラスが期待するような持続的な需要回復は、実現しない可能性が高そうだ。
アメリカ国内の需給は、依然として弱気に傾いたままだ。15日に発表された米エネルギー省情報局(EIA)の石油在庫統計では、同国内の在庫は戦略備蓄を除く原油と石油製品の合計で927.6万バレルと、9週ぶりの取り崩しに転じた。だが、これは輸入が大幅に減少したことによる部分が大きく、一時的なものと見ておいた方がよい。
原油在庫はそれでも過去5年平均を16%、原油と石油製品の合計でも13%上回っており、足元に供給が潤沢にあることに変わりはない。需要低迷も深刻で、石油製品需要は日量1848万バレルと、過去5年平均を10%強下回った水準だ。4月前半には平年の半分近くにまで落ち込んだのに比べると大幅に改善したとはいえ、ガソリン需要はやはり過去5年平均を10%近く下回っているし、ジェット燃料の需要は26%の減少と大きく落ち込んだままである。
気になる製油所稼働率の低迷
特に製油所稼働率の低迷が続いていることには、十分な注意が必要だろう。同時に発表された製油所稼働率は78.1%と、5月前半まで60%台にあったのに比べてかなり回復してきたものの、依然として過去5年平均の94.2%を大きく下回った水準にある。稼働率が80%以下に落ち込むというのは極めて異例で、これまでなら大型ハリケーンの直撃などで洪水や停電の被害によって操業が出来なくなるようなことでもない限りは見ることのなかった水準だ。
夏のドライブシーズン真っ盛りになる今の時期は、製油所にとってはまさに書き入れ時だ。例年であればフル稼働体制でガソリンなどの石油製品を生産しているところ。それだけ足元の需要が回復していないということであり、製油所から見れば、在庫も過剰に積み上がっている中で、売れないものを作っても仕方がないということなのだろう。
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