原油価格が再び「逆戻りする懸念」が出てきた 夏なのに需要は思ったほど回復していない
エネルギー関係のアナリストとは違い、ガソリンスタンドなどの顧客からの注文を直接受け取る製油所は、足元の需要の変化を真っ先に知ることが出来る。そうした彼らが稼働率を低く抑えたままにしているということは、需要の早期の回復があまり期待できないということだ。仮にここで新型コロナの感染再拡大が食い止められたとしても、需要はこれ以上戻ってこないのかもしれない。
また5月まで思った以上に速いペースで減少を続けてきたアメリカ国内の原油生産が、6月に入ってから横ばい状態が続いていることも気になる。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、NYマーカンタイル取引所で取引される原油)の先物価格は6月初めには30ドル台後半まで上昇、その後は40ドルの節目近辺の水準をしっかりと維持しての推移が続いている。
「この価格水準であれば採算が取れると見たシェールオイルの生産業者が、一部の油田の生産を再開させていることが背景にあると思われる。こうした状況を見る限り、米国内の需給はこれ以上引き締まることはなく、在庫も再び積み増し傾向が強まる可能性が高いと考えておいたほうがよい。
株価が本格的に調整するなら原油価格も低迷
一方、株価の動向にも十分な注意が必要だ。前日のように需給がそれほど引き締まった状況ではないにもかかわらず、WTI価格が40ドル近辺の水準を維持しているのは、ここまでの株価の上昇につれた、投機的な買いが相場の下支えとなっている部分が大きいからだ。米連邦準備制度理事会(FRB)がかつてない規模での金融緩和を行っているなか、潤沢な資金の一部が原油市場にも流入してきているのは間違いなさそうだ。
もっとも、足元の景気はまだそこまでしっかりと回復している訳ではなく、実体経済と株価の乖離は広がる一方だ。前回のコラム「夏の株高に賭ける人が無視する『3つのリスク』」では、米中関係の悪化に新型コロナウイルスの感染再拡大、個人消費の低迷という、ここからサマーラリーが続くにあたっての妨げとなるかもしれない懸念材料を指摘したが、それはそのまま原油市場にとっても大きな売り材料となる。
秋に向けて株価が本格的な調整局面を迎えるようなことがあれば、一時的にせよ再び1バレル=20ドル台まで値を切り下げることがあっても、何ら不思議ではないだろう。
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