アンジェス、対コロナ「DNAワクチン」の実力度 ベンチャー創業者が訴えるパンデミック対策

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――DNAワクチンは、通常のワクチンと何が違うのでしょうか。

われわれのDNAワクチンは、「環状プラスミドDNA」と呼ばれるDNAをベクター(ワクチンの主役である抗原タンパク質の運び屋)として使用する。これに新型コロナウイルスの表面にあってヒトの細胞に侵入するカギとなる「Sタンパク」の遺伝子を組み込む。これをヒトに投与すると体内で抗体が作られる。異物ではあるが、ベクター自体は遺伝情報を持たないので体内に投与しても影響はない。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

この方法は2019年から田辺三菱製薬から販売されている慢性動脈閉塞症の潰瘍治療薬「コラテジェン」で使われている。アンジェスが世界で初めて実用化に成功した遺伝子治療薬だ。

これとは別にアンジェスが開発中の高血圧の治療用ワクチンでも、同じ環状プラスミドDNAを使用している。1400人以上の健常人に投与したが、健康上の懸念は出ていない。ベクターそのものの安全性は確立していると考えている。

ワクチン開発の難しい点は、健常者に打つということ。治療薬であれば患者さんに打って回復を見ることができるが、予防ワクチンは健康な人に打つため、安全性が非常に重要になる。また、効果の測定も難しい。今回は、まずは抗体価(抗体の量や強さ)で見ることになる。

ワクチン開発は国策だ

――ワクチン製造には通常半年くらいの時間がかかりますね。

DNAワクチンのもう1つの特徴は、ワクチン製造期間を大幅に短縮できる点だ。

もりした・りゅういち/1962年生まれ。1987年大阪大学医学部卒業。スタンフォード大循環器科研究員・客員講師、大阪大学助教授を経て2003年より現職。内閣官房健康・医療戦略参与。1999年に遺伝子治療薬開発を目指すメドジーン(現アンジェス)を設立(編集部撮影)

一般的に、ワクチンは鶏卵をリアクター(培養装置)とする。有精卵を用意し、そこに弱毒化または不活化したウイルスを打って増殖させる。それを精製してワクチンとして使うが、全体で6カ月ほどかかる。

われわれのDNAワクチンは大腸菌の中で増やすので、2週間ほどで大量に増やせる。例えば、500リットルの培養槽があれば、2週間ほどで1万人分のワクチンが作れる。

――ワクチン開発の国際競争も活発になっています。DNAワクチンとしてはアメリカのイノビオ社やモデルナ社のほか、中国でも開発が進んでいます。

イノビオ社では中和抗体が確認できているようだ。同じ「Sタンパク」をターゲットにしているので、結果がよくて安心している。ただ、イノビオ社のワクチンは投与するのに、複雑で高価な機材が必要だ。われわれは投与法として筋肉注射をすでに実用化している。この点に関しては優位だと考えている。

考えておかなければならないのは、こういった国際的な新興感染症のワクチン開発は国策であるということだ。パンデミックが起きてワクチンが不足すれば、どの国も自国を優先する。他国の製薬会社に頼っていると、まさかの時に国内にワクチンがないという事態になりかねない。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「新型コロナの日本の対策について」「日本版CDCの必要性」についても語っている。
小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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