西浦教授が語る「新型コロナ」に強い街づくり 「移動の制御」を正面から議論すべきときだ 

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西浦博(にしうら・ひろし)/北海道大学大学院教授。1977年生まれ、大阪府出身。2002年、宮崎医科大学医学部卒業。ユトレヒト大学博士研究員、香港大学助理教授、東京大学大学院准教授などを経て、2016年4月から現職。専門は理論疫学。政府の「接触8割削減」推奨の理論的支柱で、「8割おじさん」のニックネームも(写真:本人提供)

――毒力も感染力も高いウイルスは現れうるのですか。

変異や進化が速い例がインフルエンザだ。致死率(死亡/感染者)の推定では高病原性の鳥インフル(H5N1)が50%程度とされるが、こうした高病原性インフルが今後、人の集団の中で十分な感染性を持ち、流行することはないという保証はない。10~50年くらいのスパンで出てくると考えられる。

エボラ出血熱も1976年に見つかって以降、宿主のサルやコウモリからときどき人にうつって流行したが、2014~15年の西アフリカのような人と人の間での感染拡大は想定されていなかった。

香港大学に所属していたとき、「SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスは消えたが、どこに行ったのか。少し弱毒化し人集団での感染性が高まったものが次の完成形として出てくるのではないか」と同僚が10回以上も話していた。あのとき、もっとそのリスクシナリオを考えておくべきだった。

高病原性インフルが出現するリスクも新型コロナと変わらないと思う。巨大津波と一緒でいつかはわからないが、それはサイコロを振ったように確率的に決まってくる。

毒力と感染力のトレードオフは妥当しないこともある

――宿主を殺してしまっては元も子もないということで、ウイルスの毒力と感染力はトレードオフの関係にあるとよく言われます。

人を主な宿主とする季節性インフルの長期的な進化としては正しい仮説と考えられている。人の社会をぐるぐる回って変異しながら生き続けなければいけないからだ。進化生物学者との議論では、ほかの動物を宿主としているインフルがポッと人にうつってくる際には、この仮説は該当しないとされる。

――ウイルスのリスクに対して私たちがなすべきは何ですか。

大地震が起きてから防波堤を作るなど、街づくりを見直す動きが起きているが、それは自然なことだ。加えて次の未知のウイルスも踏まえて、社会や街のあり方を見直す必要があると思う。そのためにも今回起きたことや、その背景やメカニズムを知ることが大切だ。

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