西浦教授が語る「新型コロナ」に強い街づくり

「移動の制御」を正面から議論すべきときだ 

――具体的に何を見直すべきでしょうか。

1つは、都市に集住して、満員電車など人の接触が過剰な人口集中型社会。もう1つは、意外とノーマークだった「移動」だ。低料金で日帰り海外出張が可能になるほど、人々は簡単に国境をまたいで移動している。今回の新型コロナに限らず、最近のジカ熱やエボラ出血熱でもこの2つが触媒となり感染症は国際的に急速に広がった。人口密度や移動率の低い社会を作るため、街づくりや産業のあり方を考え直す必要があるだろう。

理想型は、ドイツの街づくり

――見直す際の参考例はありますか。

ドイツの街づくりは理想に近い。ベルリン、ミュンヘン、シュトゥットガルトなどの街が結節状(結ばれてフシとなること)に分散し、個々の街は第1~3次産業までほかの街に依存せず、ほぼ自前でもやりくりできる。ビジネスを含めて人の移動を最小にできる。これは感染症の波及効果が小さくなることを意味する。

日本では、たとえば私の住む北海道が全国への食料供給の一翼を担うといった形になっているが、1つの街に農業や漁業、製造業や販売業、サービス業がギュッと詰まった自己完結型の作りを新しい都市計画の方向性にすべきだろう。

――それでも人口が集中する都市は残りますね。

都市の中でも人と人の接触を最小限にするビジネスのあり方を考える必要がある。リモート会議や在宅勤務などは中期だけでなく長期的にも続けなければならない。

移動というものも根本的に考え直す必要があるだろう。これまで、移動は個人の自由という観念で考えられてきた。ほかの地域との出入りは保障されている人の権利の一部だ。ただこの自由は制御されたうえでの自由にならなければいけないのかもしれない。

たとえば、ビザ(査証)のようなものが考えられる。社会経済活動を維持するうえで本当に必要なビジネス渡航や留学などと、お金さえあれば自分の嗜好性で何回でも海外旅行に行くといったものに対し、トップダウンで一定の峻別・制御を行うイメージだ。

――たとえば、海外旅行は年3回まで、4回目以降は税金などのコストを課して抑制するという手法もありえますね。

自分の経験で考えても、電車が3分遅れただけでお客さんが怒っているのは東京だけだと思う。ドイツでは2~3時間遅れてもみんな平気で、コーヒーを飲んで待っていた。都市が便利なことは素晴らしく、東京はその中でも便利すぎるほど便利だが、そうしたことが変化することも考える必要があるのかもしれない。

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