「撤退・合併・解散した外資系企業」102社リスト 外資との合弁企業は年々減少傾向

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今回のリストアップは102社となった。当該期間における最大規模の案件は、富士フイルムホールディングス(HD)による富士ゼロックスの完全子会社化だ。

2019年11月、富士フイルムHDがゼロックス(アメリカ)の持つ富士ゼロックス株25%分を買い取った。富士ゼロックスは、長らく外資合弁事業の成功例とされてきたが、その最後は“けんか別れ”となった。間接的ではあるが、子会社化によって富士ゼロックス関連企業の多くが上記調査基準における非外資となった。

そのほかにも、外資系企業との合弁解消が多く見られた。金融分野の強化に取り組むソニーは、エイゴンN.V.(オランダ)との折半合弁会社ソニーライフ・エイゴン生命を、子会社を通じて完全子会化した。

また、NTTデータもジェトロニクス(オランダ)の持ち分30%を譲受し、SWIFTなどの金融ソリューションを手がけるエヌ・ティ・ティ・データ・ジェトロニクスを完全子会社化した。

製造業では、日本軽金属が、モディン・マニュファクチャリング(アメリカ)との合弁企業として1987年に設立した、自動車用熱交換器の日軽熱交を子会社化した。

合弁解消の一方で増える、もう1つの形態

こうした合弁解消は長期的なトレンドでもある。本調査における外資比率100%未満(合弁会社を含む)企業は、2004年では39.3%だったが、2015年は24.1%、2020年は19.4%と年々減少している(『外資系企業総覧』刊行年基準。出資比率回答企業が対象)。

外部環境への素早い対応が求められるようになり、合意形成に時間がかかりがちな合弁形態は、以前よりデメリットが大きくなったと考えられる。翻って、外資比率100%企業の割合は増加している。そのほか、拠点の集約に伴う合併や閉鎖、純粋な撤退などもみられた。

今回の調査は新型コロナの影響が深刻化する前のものだ。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、新型コロナの影響を受けて「計画どおりにビジネスを拡大」すると回答した企業は22.6%。2019年調査で投資計画について「拡大する」と回答した企業の70.3%から大きく低下した。多くの外資系企業は現状維持、または計画の遅れや見直しを迫られている。

外資の呼び込みはビジネスチャンスの拡大や新規雇用創出など、経済成長には欠かせない。とくに、低成長の日本においては、外資の技術力を生かしたイノベーションの拡大が急務だ。

機動性のある外資系企業は撤退の判断も速い。コロナ不況の影響はいまだ予断を許さない。

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