しかし、実はそうではない。理由は2つある。
1つめは、投資は勝負ではないのである。誰にも勝つ必要がない。ベンチマークにも、ライバルの運用成績にも勝つ必要がない。これが個人投資家が自分の資金を運用するときの絶対的な優位性の根拠である。
だから、難しいリスクは取る必要がない。難しい戦いで勝つ必要がない。おいしいチャンスだけをしっかり、しかしそのチャンスにおいてはとことん儲ける。それがすべてである。
最近の日本株でいえば、2012年年末に、日銀の大規模緩和を見越してとことん買って、日経平均株価8000円台、9000円台で買って、1万5000円で売っておけば、ほとんどリスクなく、楽に大量に儲けられたのである。その後の2万円台への流れを追うかどうかは、人それぞれである。無理して負う必要はない、というのが私の考えである。
将棋と投資はどこが違うのか?
将棋と投資が違うのは、必ず勝たなければいけない場面、というのがないことである。この対局での1勝と、弱い相手との楽勝の1勝と、投資では同じであるからである。儲けの絶対額だけが重要だから、楽に勝てる時だけ勝てばよいからである。
2つめは、将棋のプロと違って、「われわれ」投資家は、個人投資家もプロの投資家も、精神修養がまったくできていないことがある。後ろ向きな後悔しか、投資家たちはしない。「ああ、投資しておけばよかった」「ああ調子に乗ってあんなに買うべきじゃなかった」、必ずそう思う。
投資をすると必ず、くだらない、学びにならない後悔をする。その理由は、精神修養ができていないから、ということ以外に重要な理由がある。それは運や周りの意思決定に大きく左右される、いやほとんど支配されているからである。
自分の意思決定で局面が動くことはなく、あくまで、受け身である。だから、力んで頑張っても仕方がないのである。自分は割高だと思って売っても、他の投資家が買いまくれば上がってしまい、一時的には大きく損失が出る。将棋は、すべてを自分がコントロールできる。運の作用もなく、自分の駒は自分がすべて動かす。決定的に違うのである。
長くなったので、今回はこれくらいにして、またいつか後悔についてさらに議論しよう。
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