トラウマ、というのが、その例外であるが、後悔はトラウマなのか。そうではないはずである。それが今日のイシューである。
7月9日の木曜日、将棋の藤井聡太七段は、渡辺明棋聖に負け、最年少のタイトル獲得はならなかった。無敵に見える藤井七段だが、昨年、壁にぶつかった。
タイトル挑戦をほぼ手中にした対局で、最後の最後に単純なミスを犯し、最も重要な対局に負けたのである。藤井七段が子供のころ、負けて悔しがり、とことん泣きじゃくるシーンはテレビで有名だが、彼の師匠杉本八段は、彼の力の源泉を「悔しがる力」によると言っている。この敗戦で悔しがり、徹底的に立て直し、藤井七段はもう一つ上のステージに進化したことを、コロナ自粛解禁後の一連の対局で示し続けているのである。9日の敗戦で、藤井七段はまたさらに強くなるだろうと。
後悔しなければ人間は進歩しない
これが「後悔」の役割である。後悔しなければ人間は進歩しない。学びを心の、頭脳の奥底に蓄積できない。忘れてはだめなのである。
後悔しないように行動する、というのは、学びの機会を、もっとも貴重な経験を積む機会を自ら放棄することである。
将棋であれば、相手と力差がある場合、ぎりぎりの最善手で勝つ必要がないが、そのときに、いつも負けない手、95%の手をさし続けて勝ち続けると、進歩せず、いや弱くなっていくのが将棋のプロである。
女流棋士が弱いのは、弱い相手と戦っているために、95%の手でも負けなかったり、雑に無理やり攻めても、相手が弱いから大体受け損なうので勝ってしまったりする。意外かもしれないが、将棋のプロは女流の方が圧倒的に攻め将棋で、乱暴な将棋を指すプロが多いのである。
今、男女関係なく、奨励会の3段リーグにいる西山朋佳3段(女流3冠)がいま一番強いのは、強い相手と戦っていくことを前提としてプロ入りを賭けている奨励会3段の面々と戦っているからである。
さて、この私の主張は、実は私の投資原則と矛盾する。投資の時は、あからさまに、後悔最小化で投資戦略を立てているからだ。正反対だ。投資でリスクを取らなくては、学ぶ機会がなく、投資家として進歩しないのではないか。今日の議論ではそういうことになりそうだ。
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