コニカミノルタ、コロナ後の複合機に自信の訳 山名社長が語るペーパーレス化への対応策

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――デジタルワークプレイス事業とは具体的にどんな取り組みなのですか。

ワークプレイスハブ(WPH)というコンセプトが核となる。これは複合機にサーバーを組み込み、ITマネジメントを一括したプラットフォームとして提供する仕組みだ。顧客企業は使用したアプリの数やユーザー数に応じて使用量を支払うため、経費を抑えることができる。ペーパーレスが加速してプリントサービスの売り上げが減っても、ITマネジメントの売上高が増加するとみている。

一般的に複合機の契約は2~3年に1回更新される。そのため、より安い機器を提供する企業が参入してくれば、(更新のタイミングで契約が打ち切られて)顧客との関係が切れる。

だが、ITマネジメントは個々の顧客の実情を理解してソフトウェアなどの更新を行う必要があり、新規参入が難しい。顧客からしても、自社に理解があるコニカミノルタに一括してITマネジメントを行ってほしいという需要があるため、長期的な関係を築きやすい。

顧客視点の開発に時間がかかった

――2023年3月期にデジタルワークプレイス事業の売上高を1000億円にする計画を立てましたが、2020年3月期の売上高は他の事業も含めて106億円と達成には程遠い状況です。狙ったようなニーズはあるのでしょうか。

計画の遅れは顧客視点のサービス開発に時間がかかったためだ。ソフトウェア開発は作って終わりというわけではない。完成後もさまざまな業種・業態の顧客の要望に沿った開発に取り組む必要があった。

やまな・しょうえい/1954年生まれ、兵庫県出身。1977年早稲田大学商学部卒業後、ミノルタカメラ入社。コニカミノルタ取締役兼常務執行役、コニカミノルタビジネステクノロジーズ社長などを経て、2014年4月より現職(記者撮影)

今は試行錯誤の時期を終え、顧客が必要とするサービスを提供する体制が整った。サービスは欧米で先行し、料金体系も欧米の需要に合わせて定額制を採用した。当初は月々の使用料を1250ドルくらいと想定していたが、実際には約2倍の使用料をもらえている。顧客に価値を認められている証拠だ。

ITサービスの開発や販売、保守・管理など、デジタルワークプレイス事業を構成する技術やサービスは欧米を中心にM&Aを進めて一通り獲得できた。今後は投資と収益のバランスを取っていく。日本でもサービス提供を開始しており、今後は成果をあげていけるだろう。

コロナ後にペーパーレスが加速するからこそ、こうした事業機会が拡大する。大手に比べてIT化が遅れている中堅中小企業こそアフターコロナへの対応を早めなければならない。だからこそ、中堅中小企業を主要顧客とする我々のサービス需要が増加していく。

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