オフィスレス会社の進化形は「社員レス会社」だ コロナ禍で見直される「固定費と固定観念」
実は私が経営している会社も4月末にオフィスの解約申請を出した。オフィスは解約するためには3カ月から半年前の告知が必要なので、まだ完全にオフィスがなくなったという会社は少ないが、知人の経営者からも「解約した」という話は最近本当によく聞くし、経営者同士での話題はもっぱらオフィスをどうするかになっている。
使っていないオフィスの一部を知人の会社に貸している会社があったり、曜日を分けてオフィスをシェアしないか、という提案も聞く。
外国語学習者向けQ&Aサービス「HiNative」を運営するLang-8社もオフィスを解約すると公表していた。コストメリットだけではなく、過去の常識にとらわれない迅速な意思決定もこれからを生き残る経営者には必須のスキルなのかもしれない。
オフィスを解約することの賛否
わが社も結果的にオフィスの解約をしたが、もちろんデメリットもあるので、すぐに意思決定できたわけではない。
個人差はあるが、筆者自身リモートワークによって仕事の作業効率は格段にあがった。作業中に誰かに話しかけられたり、背後で気になる雑談が始まったりしないからだ。ミーティングと作業時間が完全に分断されるのでミーティングはミーティング、作業時間は作業時間とパキッと境界ができ、それぞれに集中できるようになった。
経営者にとって利益にそのままヒットする固定費は削減できるものなら削減したいものである。固定費は今の時代、リスクなのかもしれない。だから毎月ただただ出ていくオフィス賃料は無視できなかった。
その分マーケティングや採用にお金を回せるじゃないか、とやきもきする日々が続いた。家賃の固定費を削減した分を、インターネットや在宅勤務の環境を整えるという手当の名目で一定部分を従業員に還元すれば満足度も得られる。
ただ、すぐにオフィスを解約すればいいじゃないかというとそこまで簡単な話ではない。オフィスがあったことで生まれていた価値やそこで生まれる文化のことは忘れてはいけない。
立ち話から生まれる新しいアイデアや、タバコ部屋などで生まれる他部署との人間関係から仕事がやりやすくなった経験は、誰にでも心当たりがあると思う。そういう偶然の出会いや人間関係が生まれなくなるのである。完全にリモートワークにするのであれば、何かしら仕組みでカバーしなければそういうものをただ捨てることになってしまう。
また、リモートワークでは会社独自の文化を醸成していくのはだいぶ難しいと思っている。同じ釜の飯を食う、とはよく言ったもので、仕事終わりに流れで飲みに行ったり、一服がてらランチに出たり、そうでなくともオフィスで同じ空気を感じて働いていたのとはわけが違う。そういう空気を共有できていたものを何かしらでカバーする必要があるように考えている。
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