銀行の融資激増で「3~5年後」が今から心配な訳 コロナ禍で企業支えるが不良債権化リスクも

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ひとたび動脈硬化でも起こせば、日本経済に計り知れないダメージを与えかねない(デザイン:池田 梢、写真:imagenavi)

「銀行が初めて雨の日に傘を貸した」。

金融関係者の中でそんな声が広がっている。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、資金繰り支援に奔走する銀行の姿を目の当たりにしたからだ。

銀行はこれまで、「晴れになったら傘を貸し、雨が降ったら取り上げる」と揶揄されてきた。つまり、経済が好景気で、企業の経営が好調な時にはどんどん融資を実行し、景気が後退し、企業の経営が苦しくなると、一転して資金を引き揚げていく――。そんな姿勢が当たり前とされていた。

倒産回避に積極融資に銀行が動く

ただ、今回は違った。緊急事態宣言が発出された後も、銀行は運営を続けて企業の相談に乗り、積極的に融資して企業の資金繰りを支えていった。『週刊東洋経済』では7月6日発売号で、「銀行 地殻変動」を特集。銀行の変化やその裏に潜むリスクを描いている。

その積極性は数字のうえでも明らかだ。全国の銀行と信用金庫の貸出残高は4月の平均残高で553兆4863億円と、20年ぶりに過去最高を更新。5月はさらにそれを上回る、562兆5464億円を記録している。

大企業に対しては、手元資金の不足に備えた融資枠の設定(コミットメントライン)を活発に行っている。コミットメントラインの契約は3月に354件、4月に128件増加した。中小企業に対しても、返済猶予など融資条件の変更に99.8%(5月末時点)と、ほとんど応じている状況だ。

政府もそんな銀行の支援態勢を後押ししている。6月に成立した第2次補正予算では、企業の資金繰り支援に約12兆円を計上した。国を挙げての「異次元融資」のおかげで、倒産の連鎖は防ぐことができている。

しかし、その積極融資の裏では、銀行を襲う「時限爆弾」が着実に膨らみつつある。

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