銀行の融資激増で「3~5年後」が今から心配な訳 コロナ禍で企業支えるが不良債権化リスクも

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
(出所)『週刊東洋経済』7月6日発売号「銀行 地殻変動」

(外部配信先ではグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

最大の時限爆弾は不良債権化のリスクだ。足元の融資は「激変緩和措置」(地方銀行の営業マン)で、倒産の連鎖が発生しないよう、スピード重視で融資をしている。しかし、その融資先の中にはコロナ以前から構造的な問題を抱えてきた企業も含まれており、業況が改善しなければ、いずれ支えることができなくなる。

大手地銀の営業マンは「3年後、5年後に不良債権化するリスクを感じながら融資をしている」と語る。「3年」と「5年」を意識する理由は、足元で実行されている日本政策金融公庫や民間金融機関による実質無利子融資の仕組みにある。実質無利子融資の制度の中身を見ると、実質無利子となる期間は3年、元金返済の猶予据え置き期間は最大5年に設定されているのだ。

この期間に事業を立て直し、返済ができる体制を構築しなければ、企業は倒産に追い込まれる。利子や元金の返済が始まる3年、5年のタイミングで、そうした企業が相次ぐのではないかという見立てだ。

大企業への融資も膨れ上がる

こうした問題は中小企業が中心だが、大企業にも不良債権のリスクは眠っている。日産自動車やANA(全日本空輸)のように、銀行に多額の融資を求める企業が増え始めた。新型コロナウイルスの感染者数も再び増加基調に戻りつつあり、第2波、第3波の懸念もある。大口融資先の問題も今後増加してくる可能性が高い。

銀行側も将来のリスクを意識している。3メガバンクの2020年度(2021年3月期)の計画では、融資先が破綻し、貸出金が回収できなくなる場合に備えて、損失として計上する貸倒引当金繰入額や、回収が不可能になり、確定した損失を計上する償却額などの与信費用を大幅に積み増している。

三菱UFJフィナンシャル・グループは、計4500億円(前年比2229億円増)、三井住友フィナンシャルグループも4500億円(同2794億円増)、みずほフィナンシャルグループは2000億円(同282億円増)の与信費用を見込んでいる。

『週刊東洋経済』7月6日発売号の特集は「銀行 地殻変動」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

地方銀行でも特徴的な動きが見られた。ふくおかフィナンシャルグループは2019年度決算で、福岡銀行、熊本銀行、親和銀行、十八銀行の傘下4行合わせて614億円の与信費用を計上した。これは、2018年度の与信費用51億円の10倍以上にものぼる金額だ。

そのうち、418億円は「フォワードルッキング引当」と呼ばれる新しい手法によるもの。景気のよかった直近の低い倒産実績を元に引き当てるのではなく、将来、景気後退が起きた際にどの程度倒産が発生するかを折り込んだ「予防的」な引き当てだ。つまり、ふくおかフィナンシャルグループは、将来的に倒産が増えるとみているということだ。

ただ地方銀行の多くが、ふくおかフィナンシャルグループのような引き当てができるわけではない。「引き当てを積み過ぎると赤字に陥ってしまうため、できない。本音ベースではもっと積んでおきたい」と大手地銀幹部は語る。

次ページ営業担当者の手前積み増せない
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事