「白人声優の降板」歓迎するアメリカの特殊事情 「黒人のチャンスを奪う時代」はもう終わりだ

拡大
縮小

有色人種のキャラクターの声を白人が担当する問題は、決して初めて認識されたものではない。実際、近年はそこを意識してキャスティングするケースも見られるようになった。

2019年に公開された『ライオン・キング』では、主要キャラクターの多くが黒人キャストで固められている。ライオンに黒人も白人もないわけだが、舞台となるアフリカに敬意を捧げるのであれば、アフリカ系アメリカ人に声を任せるのは決して間違いではない。

2008年の『カンフー・パンダ』で、「中国に愛を捧げる」と言いつつ、ジャック・ブラック、アンジェリーナ・ジョリー、ダスティン・ホフマンら白人俳優に最も重要な役を任せたのとは大違いだ。

日本のアニメにも、多少の変化が見られてきた。2009年にアメリカ公開された『崖の上のポニョ』ではマット・デイモンやケイト・ブランシェットが声を務めたが、2018年に公開された『未来のミライ』では、父親役をジョン・チョー、祖父役をダニエル・デイ・キムなどアジア系俳優が演じたのだ。

しかし、母親役はなぜか白人のレベッカ・ホールだったし、2019年の『天気の子』では、意識してアジア系を起用しようとする配慮が見られなかった。今後アメリカ公開される作品では、こうした配慮を無視することはおそらく許されないだろう。

変化を求められる「アメリカのアニメ映画」

さらに、今回の騒動を機に、「声優の選び方そのもの」を見直すことになるのではないかと思う。人種平等の潮流だけでなく、コロナによる景気後退もまた、後押ししそうだ。

この20年ほど、ハリウッドのアニメの声優は、たびたび知名度や人気度で選ばれてきた。1999年の2Dアニメ『アイアン・ジャイアント』では、とくにふさわしいというわけでもないのに主人公の母親役を人気女優のジェニファー・アニストンが務めたが、CGアニメの競争が激化してからはますます大スターがキャラクターの声を当てる傾向が強まった。

次ページアメリカでも声優の仕事がスターに奪われている
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT