「白人声優の降板」歓迎するアメリカの特殊事情 「黒人のチャンスを奪う時代」はもう終わりだ
人種平等を求める「Black Lives Matter」運動の余波が、アメリカ各地に広がっている。最近では、アニメの声優を誰が務めるのかに焦点が当たった。人気アニメ番組の製作者や声優が立て続けに、「白人声優が有色人種キャラクターの声を担うのは不適切だからやめる」と言い出したのだ。
6月26日、放映開始から30年の長寿アニメ『ザ・シンプソンズ』のプロデューサーがその意向を発表。6月27日には、放映開始20年の『ファミリー・ガイ』で黒人キャラクターの声を担当してきた白人声優のマイク・ヘンリーが、ツイッターで降板を発表した。
彼らのほかにも、女優のクリステン・ベルがAppleTV+の『セントラル・パーク』から、ジェニー・スレートがNetflixの『ビッグマウス』から、それぞれ有色人種のキャラクターの声を降板。アリソン・ブリーも、Netflixの『ボージャック・ホースマン』でベトナム人のキャラクターの声を担当してきたことに対して謝罪のメッセージを送っている。
いくら人種平等が大事だからと言って、何もそこまで目くじら立てなくてもと思う人もいるかもしれない。だが、今回の騒動はさまざまな意味で当然のことであり、むしろ遅すぎた対応ともいえるのだ。
なぜ「白人声優の降板」が当然なのか?
まず1つに、そもそもハリウッドには「有色人種のための役がとても少ない」という背景がある。有色人種のキャラクターを顔が見えないからといって白人に任せてしまうと、ただでさえ恵まれない有色人種の声優たちのチャンスがさらに奪われてしまう。
2つ目は、もっと根本的な問題だ。有色人種のキャラクターが白人の声でしゃべることは不自然なのである。というのも、そもそも白人と黒人は声質が異なる。もし電話越しで顔の見えない状態で話したとしても、相手が白人か黒人かどうかはすぐわかる。
なのに、これまで作り手はわざわざ白人声優を起用し、黒人の声真似をさせていたのだ。これはある意味、有色人種に対するステレオタイプを増長させる行為でもあり、つまり、2重、3重の侮辱でもある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら