日本がアメリカ・中国との間で求められる姿勢 グローバリゼーションに目を背けてはならない

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世界は1国の都合だけで考えられる時代ではない(写真:pengpeng/iStock)

丹羽宇一郎 令和日本の大問題: 現実を見よ! 危機感を持て!』(東洋経済新報社)の著者、丹羽宇一郎氏は、東洋経済オンラインにも寄稿しており、本書のことも過去にご自身で何度か取り上げている。

それでもなお紹介したいと感じたのは、われわれ日本人が「これからの30年」をいかに生きるべきかをテーマにした本書に、強い説得力があるからだ。

参考までに書き添えておくと、丹羽氏は伊藤忠商事会長・社長、日本郵政株式会社取締役、特定非営利活動法人国際連合世界食糧計画WFP協会会長などを務めた実績を持つ実業家である。

いつの世も問題はあって当たり前。肝心なのは問題から目を背けないことだ。今回のウイルス対策でも、はたして問題を真正面から捉えていたか。ウイルスの本質を理解していたか。水際で食い止めたいという願望だけで、国内の感染拡大に対する準備が不足していなかったか。最悪の事態から目を背けていなかったか。
1941年8月、近衛文麿(1891〜1945)内閣は当時のエリートが結集した「総力戦研究所」の提出した、日本必敗のシミュレーションを「戦争はやってみなければわからない」と握りつぶし、イチかバチかの賭けに出た。その結果が、あの悲惨な敗戦である。
われわれは、日本の抱える問題からけっして目を背けてはならない。
(「はじめに」より)

そしてもう1つ、それらの問題を「正しく捉える」ことも重要だと主張している。高齢化社会はなにかと問題視されるが、長寿が問題なのではなく、われわれの知恵とわれわれの社会が、いまだ医学的発展に追いついていないことこそが本当の問題なのだということである。

つまり、そうした問題に取り組む姿勢、そして問題を乗り越える道を求め、本書を執筆するに至ったというのだ。

「働き方」や「絶望との向き合い方」「危機に対する意識」「人口減少社会」についてなど、切り口も多彩。そんななか、とくに興味深く感じたのは、今後30年のうちに日本の周辺で起きることについての視点だった。

中国が嫌いでも引っ越しはできない

アメリカのドナルド・トランプ大統領が仕掛けた報復関税合戦やファーウェイの排除騒動などを見るまでもなく、アメリカと中国との関係は誰の目から見ても最悪だと言わざるをえないだろう。

しかし丹羽氏はここで、あえて物事を単純化して考えている。そんな視点から現実の両国の経済関係を見てみれば、双方の関係の深さが見えてくるというのだ。

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