「エリート家族」が生きがいだった老女の末路 息子はアメリカの名門校を卒業後、帰国せず
「ヨネ子さん、ご主人が亡くなってから心の状態がよくないのはおわかりですよね? いずれにしても、少し外の空気を吸ったほうがいいですよ。お友達を誘って近所の喫茶店でお茶でもしてくるのはどうですか? お身体のほうは食事をきちんと取れれば何ら問題ないのですから」
そう促してみると、またヨネ子さんは「わぁ~!!」といって泣き崩れるのです。
仕方がないので、薄手のカーテンを開け、窓を全開にして空気の入れ替えをしながら、なぜそんなに泣きたくなるのか少しずつ聞くことにしました。
「ずっと家族のために尽くしてきたもの。友達なんていないわよ」
か細い声でヨネ子さんは漏らします。
戸建てのお家だと、町内会やご近所のお付き合いがありそうですが、“エリート一家”ということで、地域の中でも少し浮いた存在だったようです。
というのも、ヨネ子さんのお宅に通い始めて少し経ったある日、2軒先のご主人に、「お姉さん! お姉さん!」と呼び止められ、「ヨネ子さん、元気かい? 最近めっきり顔をみなくなったから心配してたんだよ。女房にちょっと様子見に行って来いよって言ったんだけど、女房が嫌がってよ」と話してくれました。
ご主人が生きてた頃、ヨネ子さんはご近所に随分夫や息子のエリート自慢をしてたようで、すっかり嫌われてしまっていたのです。
ヨネ子さんにとっては「家族のために尽くしてきた」ということでも、周りにとってそれはマウントでしかなく、近所の中でも孤立してしまったのです。
シロアリ駆除で家具の処分を決めたけれど…
夏も終わりに差しかかったころ、ある事件が起きました。家具と壁の間から、シロアリが発生したのです。
これは大変!と、すぐに状況をヨネ子さんにお話しし、木造のこの家が全部だめになる前に業者を呼んで家具も全部見てもらうように促しました。3日後、シロアリ駆除業者に見てもらうと、家具の大半が被害に遭っているそうで、すぐに家具を処理しないと家が危ないという危機的状況でした。
さっきまで「庭に植えていたミョウガを狸に全部食べられた。わぁ~!!」と泣いていたヨネ子さんでしたが、この話を聞くと、パッと目の色が変わり、「主人が建ててくれた家なの」と言って、すぐに処分してもらうようにと指示をされました。
ところが業者が帰って少しすると、「このタンスも、この食器棚も、どうしてこんなことにならないといけないの。全部大事なものなのに。どうして!」と言っていつまでも泣き続けました。
家具の処分日は、介護サービスがない日で心配だったので、2軒先のご主人に状況を説明し、何かあったら事務所まで電話してもらうようにお願いしておきました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら