森永卓郎「東京五輪で景気回復は期待できない」 「パンデミックは2年続く」と専門家も警鐘
ゲームは戦いに勝ったり、ロールプレイングゲームでうまくいったりしても、所詮はバーチャルな空間での出来事です。オンラインでのやりとりも、対面したときのようなぬくもりや温度感は伝わりません。現実生活に戻ると、「無駄な時間を過ごしてしまった」「なんだかむなしい」と後悔した人は少なくないでしょう。
そのため今後は、現実の世界で役に立つ、実際に手に触れることができるものに手間暇をかけたい、というニーズが大きくなっていくのが自然ではないでしょうか。
新型コロナウイルスの感染拡大で、テレビの出演機会も減り、私自身、多くの時間を持てるようになりました。有り体に言えば、暇になったわけです。
「作る過程」を楽しむ時代が来る
そこで毎朝6時に起床し、博物館の3階に未展示のものが山積みになっているので整理して並べる作業もしました。毎日やっても5年ぐらいはかかる量です。
それから畑作業もやっています。畑はものすごく手間がかかります。私は手間を惜しみませんが、できるだけお金をかけないように心がけています。プラスチックフィルムや稲わらで土壌を覆う「マルチング(mulching)」という農業技術があります。使用するビニールはホームセンターで売っていますが、業務用のため50メートル巻きなど大きいもので高額です。そこで私は“100均”で黒いごみ袋を買い、継ぎ目を剥がして開き、自分で穴を開けて地面に張っていきます。まさにDIYです。
その後、トウモロコシをマルチングした畑に埋めたところ、2週間で発芽しました。プロは1つのホールに3粒ぐらいまきます。これは発芽しないこともあるための保険で、もし3粒とも発芽したら1つを残してほかの芽は摘みます。私は、ケチなので1粒しか埋めません。芽が出てこないところはもう一度、種を埋めます。
このように手間をかけて農作物を作りますが、これはバーチャルな世界とはまったく異なります。手を抜けば、簡単にゲームオーバーします。しかし、収穫時の感動はゲームでは絶対に味わえません。
従来、面倒くさいと敬遠されていた仕事、テクノロジーで代替してきた作業が、時間ができることによって注目を集める可能性はあるでしょう。畑の場合は出来上がった作物を利用する目的がありますが、その作る過程も楽しむことで時間が有効利用できます。
こうした楽しみは今に始まったことではありません。男性なら大抵、子供のころ、プラモデルを作った経験があるでしょう。完成済のプラモデルを買うケースはあまりないと思います。それは、作る過程も含めて楽しむということにほかなりません。
料理やDIY、自主映画製作などに取り組む人は確実に増えていくでしょう。成果物より体験を重視する。今回のコロナ禍でその傾向がより強まると考えられます。
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