ディズニー、4カ月ぶり再開で待ち受ける課題 時差入場券など、感染防止へ工夫あれこれ

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しかし、2020年に入って新型コロナウイルスの感染が拡大し、政府が2月末に大型イベントの自粛を要請。同29日から休園を余儀なくされ、2020年3月期は売上高が前期比11.7%減の4644億円、営業利益は同25.1%減の968億円へ大幅に悪化した。

3月にはムーミンバレーパーク(埼玉県)やよみうりランド(東京都)など、複数のテーマパークや遊園地が一時的に営業を再開したものの、オリエンタルランドの営業再開は遅れた。4カ月もの休園に耐えられたのも、流動比率が315.1%(2020年3月末時点)など好財務体質がある。

「美女と野獣」オープンは未定のまま

既存の上限1500億円のコミットメント期間付タームローンに加え、5月にはみずほ銀行と2000億円のコミットメントラインを設定。発症者を出すリスクを極力避け、営業再開に慎重な姿勢を崩さなかった一方、資金面の施策には積極的に取り組んできた。

7月からの営業再開の判断も、「世の中の状況や緊急事態宣言などの解除を踏まえ、ゲスト(入園者)やキャスト(従業員)の安全対策も整った」(同社広報)ためだと説明する。入場制限を緩和する時期の見通しは立っていないが、社会情勢をみながら判断していくという。

とはいえ、次なる課題も待ち受ける。新アトラクション「美女と野獣」や「ベイマックス」などを含む、4月オープン予定の大規模開発エリアを入園者にいつ開放するかだ。約750億円を投じている同エリアについて、オリエンタルランドは「開業時期は未定」としたままだ。

同エリアの開業はパーク全体の収容規模拡大につながる一方で、「美女と野獣」や「ベイマックス」といったディズニーの人気作品を扱うことから入園者の利用が集中することが見込まれる。このため、「新たなエリアの開業でたくさんの利用者が(特定のエリアに)密集してしまう状況は回避したい」(同社広報)と、同エリアのオープン時期を慎重に見極めたい考えだ。

中期的には、新型コロナのようなイベントリスクに備え、テーマパークと隣接ホテルに依存している収益モデルを多角化することも課題になる。オリエンタルランドの上西京一郎社長は4月の決算説明会で、「(2020年度までの)中期経営計画の期間中はコア事業に注力してきたが、引き続き新規事業創出にも取り組んでいる」と語った。

6月にはオリエンタルランドが30億円を出資したベンチャー投資ファンド「オリエンタルランド・イノベーションズ」を立ち上げた。「遊びと学びの両立支援」「商流・物流の効率化」「暑さ対策」などをテーマにベンチャー企業へ投資していく。

2大パークの再開にやっとこぎつけたオリエンタルランド。当面の課題は7月1日から始まる入場制限付き運営を軌道に乗せ、社会的距離をとりながら来園者に楽しんでもらうことだが、並行して次なる成長と安定に向けた動きをとれるか。真価が問われている。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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