沖縄、全国学力テスト「最下位脱出」の光と影 躍進を支えた県の元教育長「序列づけやめて」
小学6年生と中学3年生を対象とする全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が2007年度に始まって以来、沖縄県では、小中とも正答率が6年連続で全国最下位を喫していた。“万年最下位”が定位置になっていたのに、2014年度に突如、小学校の総合成績が24位に上昇。最近も2018年度は17位、2019年度は6位まで上がっている。
この急浮上を牽引したのが、沖縄県教育長だった諸見里明氏(64歳)である。最下位脱出のために何をしたのか。教育者として「順位付け」をどう考えているのか。全国学力テストの功罪は何か。新型コロナウイルスの影響で本年度実施が見送られた一服状態を機に、諸見里氏や関係者に細かく尋ねた。
「おまえら、仕事しているのか」
「総合得点は小学校、中学校とも全国最下位となっています」
諸見里氏は2013年8月下旬、沖縄県教育庁(沖縄県教育委員会事務局)の職員からそんな報告を受けた。2013年度のテスト結果である。諸見里氏はこの年度から県教育長に就いたばかり。テストは就任直後の4月中旬に行われていた。東日本大震災で実施されなかった2011年度を除き、最下位を脱したことがない。
「どうして6年間も全国最下位を脱しえないんだろう、と頭を抱えました。歴代の教育長たちも手をこまねいてきたわけではありません。初めてのテストで最下位になった直後には、当時の教育長が沖縄県教育庁を横断する形で学力向上に向けた組織を立ち上げた。全国首位を続ける秋田県に教員を派遣したこともあります。それでも結果が出ない。私が教育長になった後には『他府県の子どもたちに比べて、沖縄の児童生徒は元から頭がよくないのか』と職員たちと真剣に話し合ったことすらありました」
諸見里氏によると、2年連続で全国最下位の結果が出た際には、沖縄県教育庁に「おまえら、仕事しているのか」「職員は全員辞表を書いて辞めろ」など苦情の電話が殺到したという。
教育長になったばかりの2013年度のテストも全国最下位……。それに関する詳細な報告を受けながら、諸見里氏はあることに引っかかったという。ずっと低迷していた沖縄県内の小学校のうち、いくつかの学校が全国平均を上回る結果を叩き出していた。分析すると、共通項が見えてきた。すなわち、リーダーシップの強い校長が就任し、学力向上に強力に取り組んでいる学校ばかりだったというのである。
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