沖縄、全国学力テスト「最下位脱出」の光と影

躍進を支えた県の元教育長「序列づけやめて」

沖縄県の小学校が最下位を脱出した際、学校現場からは「過去問ばかりやらせていた」「直前の授業が学力テストの対策ばかりだった」という声もずいぶん出た。そうした批判に、諸見里氏はこう答える。

「私はむしろ、学校意識の変革や板書の仕方など授業改善に取り組んだつもりです。職員が訪問した際、学校に過去問を置いていくことはしたと思うけど、『過去問対策をやって』と指示したことはありません。2014年度は、テストと同時に行われた意識調査で『算数を解く楽しみがわかった』という回答がぐんとはね上がったんです。過去問ばかり強いていたら、こんな答えには絶対ならないと思うんです」

一方で、学校現場の負担を増やしたとの自覚もあるという。

「文科省が推進するようになったアクティブ・ラーニング(積極的・能動的な学習)に近い授業も、あの時から進めていました。アクティブ・ラーニングをやるとなると、先生たちは『どう発問したら、子どもたちが自分で考えるようになるか』を事前に相当考え、計画する必要があります。準備に相当、時間を使う。私が教育長のときに導入を進めた家庭学習ノートも、実際に使われたものを見ると、赤ペンが相当入っている。確かに先生方は忙しくなったとは思います」

「憤りを感じつつも、やるからには」

ところが、諸見里氏自身は全国学力テストそのものには否定的だったという。

「テストが始まった2007年度からずっと『こういう競争をあおる、序列をつけるようなことは絶対やめてほしい』と思っていました。文科省は『都道府県の競争意識をあおるものではなく、教育指導の充実や学習状況の改善等に役立ててもらう』と説明していましたが、そんなことは建前にすぎません。だから、教育長になったときも『沖縄はずっと最下位でもいい』と開き直りたい気持ちもあった。でも、憤りを感じつつも、テストをやるからには『君たちは最下位じゃない』ということを子どもたちに見せてあげたかった」

「学力テストが続く限り、毎年、どこかの都道府県が『あなたたちは全国で最下位でした』と指摘されてしまいます。沖縄県の子どもたちはそれを味わってきましたし、中学生は今も最下位のままです。しかし、本当の学力とは、いくつかの教科テストだけで測れるものでしょうか。教育基本法第1条には『教育は、人格の完成を目指し』という教育の目的が掲げられています。文科省はその基本に今一度立ち返ってほしいと思います」

<取材:当銘寿夫=フロントラインプレス(Frontline Press)>

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