Jヴィレッジ除染めぐる東電と福島県の隠し事 聖火リレー開始地点に汚染廃棄物を極秘保管

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この時期に東洋経済はJヴィレッジの原状回復工事の法令違反疑惑について、記者会見のたびに東電の広報担当者に質問していた。

5月11日にはJヴィレッジの原状回復工事で発生した放射性物質を含む廃棄物の保管場所や保管主体、保管方法について、Jヴィレッジを所管する福島県エネルギー課に電話で問い合わせた。福島県から東電への不適切な情報提供は、まさにこのタイミングで起きていた。

おしどりマコ氏は当時、Jヴィレッジの原状復旧工事の詳細に関する情報公開請求を実施。その後、約600枚の資料を入手したうえで、6月18日付けで記事を公開している。

それにしても、なぜ福島県と東電の間で、なれ合いとも言えるこのようなやり取りが延々と続けられてきたのだろうか。

東電は原発事故を起こした加害者であり、福島県は全域を放射性物質で汚染されるなど、被害者の立場にある。ピーク時には16万人もの県民が避難生活を余儀なくされた。今も、数万人が避難を続けている。

ないがしろにされた情報公開

他方、復興に関して言えば、東電は福島県を支援する立場であり、福島県は復興事業を通じて利益を得る立場にある。

Jヴィレッジの復旧・再整備について話し合われた会議でも、東電の石崎芳行副社長(2015年当時)は「Jヴィレッジをきれいに直してお返しするのは当然であるが、プラスアルファの部分をどのように加えていくか今後検討したい」「昨年、『応援企業ネットワーク』を立ち上げた。加入する30万人の関係者と、その家族を含めれば100万人の方がJヴィレッジを活用できるようなことを考えたい」などと語っている(2015年1月29日の第3回Jヴィレッジ復興プロジェクト委員会議事録)。

この会議を踏まえて福島県が取りまとめた2015年1月の報告書「『新生Jヴィレッジ』復興・再整備計画」では、2020年度の施設利用者数を東日本大震災前の水準に戻すとの目標が記されている。そのうえで、新館を増築することによるビジネスユーザーの呼び込みや、海外からの視察者を増やす取り組みの方針が述べられている。併せて、「徹底的な除染の取り組みや、放射線量を積極的に情報公開していく」方針も述べられている。

だが、高濃度の放射性物質で汚染された廃棄物をJヴィレッジ敷地内で保管していながら、「風評被害のおそれ」を口実にその事実を伏せたままにして客を誘致していた。その姿勢は、福島県がうたう「積極的な情報公開」の理念とはほど遠い。

東電は、原状回復工事で発生した汚染土壌を、どこでどのように再利用したのかについても明らかにする責務がある。徹底した情報公開なしに、原発事故からの信頼回復はありえない。東電と福島県はそのことを肝に銘じるべきだ。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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