Jヴィレッジ除染めぐる東電と福島県の隠し事 聖火リレー開始地点に汚染廃棄物を極秘保管
そしてグリーンピースの要請を踏まえて実施された環境省の測定により、地上からの高さ1メートルでの空間放射線量が毎時1.79マイクロシーベルトに達していたことが判明。12月上旬に東電が最大値で1キログラム当たり、103万ベクレルに達する高レベルの汚染土壌を除去した。
その過程で新たに浮上したのが、Jヴィレッジ本体の敷地の除染作業にまつわる法令違反の疑惑だった。3月23日の記者会見で東電は、除染業務であれば必要とされる作業員への放射線教育を実施していなかったことや、放射線被ばくの記録を残していなかったことを明らかにした。
5月18日の記者会見では、ピッチやスタジアム、楢葉町営駐車場の汚染土壌やアスファルトの除去を含む原状回復工事にたずさわった作業員の延べ人数が4万1000人に達していたと東電は説明した。
厚生労働省の「除染電離則」は、楢葉町など国が定めた「除染特別地域」などにおいて除染を業務として実施する場合に、作業員への放射線教育や被ばく線量の測定、記録の管理を義務づけている。もしもそれを実施していない場合、労働安全衛生法に抵触することととなり、行政指導や罰則の対象となる。
「法令違反ではないか」との会見での指摘を踏まえ、東電は「Jヴィレッジで実施した原状回復工事に除染電離則でいう除染業務の規定が適用されるか否かについて、現在、富岡労働基準監督署に確認中」だとしている。
高濃度の廃棄物を極秘保管
東電は5月18日の会見で、Jヴィレッジの原状回復工事を通じて5万2818立方メートルの廃棄物や汚染土壌が発生したこと、その中に1キログラム当たり8000ベクレルを上回る高濃度の放射性物質に汚染された廃棄物(118立方メートル)が含まれていること、そして適正な処分に必要な指定廃棄物の指定申請手続が未完了であることも公表した。
さらに6月8日の会見で東電は、高濃度の廃棄物の中身が防球ネットやテニスコートマットであると説明。また、1キログラム当たり8000ベクレルを下回る汚染土壌約5万1000立方メートルを土地造成工事で再利用した事実も明らかにした。
その一方で東電は、1キログラム当たり8000ベクレル超の廃棄物をどこに保管しているのかについては「管理上の理由」により開示を拒んだ。土地造成工事の場所や具体的な工事内容、近隣住民への説明の有無についても「関係者に迷惑をかける」ことを理由に開示していない。
国の除染作業で発生した汚染土壌はそのすべてを福島県大熊町および双葉町に建設された中間貯蔵施設に運び込み、30年にわたって暫定保管するルールになっている。現時点では、汚染土壌の再利用は実証事業の場合を除き、認められていない。これに対して東電は、「国とは適用されるルールが異なる」として、汚染土壌を密かに再利用していたのである。
そして今回、東洋経済が入手した東電社内の記録により、1キログラム当たり8000ベクレル超の廃棄物がJヴィレッジの敷地内で保管されていることや、保管場所について公表しないように東電が福島県から「口止め」されていた事実も明らかになった。
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