フジ・産経「世論調査捏造」を生んだ根深い病巣 世論調査の当事者が語った衝撃の現場実態

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彼自身、社内ではずいぶんと辛い目に合っているようだ。

「数値には必ずバイアスがかかりますから、それをどうかみ砕くかを調査の担当者は知っていなければなりません。調査方法も含めて理解が深くないと、調査会社が出してきた結果を鵜呑みにするしかなくなります」

「地味な作業ですから、疎かにされがちなのかもしれません。『誰でも適当にやればできるだろ』と上層部がバカにして、理解してくれなくて悔しい思いをしたこともあります。こうしたことが、今回の問題の根っこにあるのではないかと思います」

合理化の中で切り捨てられる「報道の根幹」

世論調査を含めた調査報道は、報道機関にとって重要な役割の1つだ。ある意味、社会がメディアに対して最も期待する役割は調査報道であると言ってもいい。

しかし、近年のメディアを取り巻く経営環境の悪化に伴い、新聞社やテレビ局でも経営の合理化は否応なしに進んでいる。そして、そんな中で真っ先に切り捨てられているのが、地味で費用対効果の悪い調査報道関係の部署であることは、残念ながら事実であると言わざるをえない。

そんな中、従来であれば「報道機関の根幹」として聖域扱いされてきた世論調査の担当部署も、次第に切り捨てられつつあるということが、今回の問題の背景にある事情ではなかろうか。もし、そうであれば、やはりこれは一新聞社・テレビ局の不祥事で済まされる問題ではない気がする。

健全な民主主義社会と言論環境を保つためにも、こうした世論調査の現場担当者の声にも耳を傾けつつ、もう一度、調査報道・世論調査のあり方について考え直すべき時期が来ているのかもしれない。

鎮目 博道 テレビプロデューサー、顔ハメパネル愛好家、江戸川大学非常勤講師

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しずめ ひろみち / Hiromichi Shizume

1992年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなど海外取材を多く手がける。またAbemaTVの立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルのメディアとしての可能性をライフワークとして研究する。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社・2月22日発売)

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