COP15で露呈した温暖化阻止への茨道

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 これに対し、桜井正光・経済同友会代表幹事は「次期枠組み構築へ向けた今後の道筋と期限が不透明になったことは誠に遺憾」と発言。電機や自動車など環境対応型の製品開発に注力するメーカーの間では、25%削減を負担と受益の両面でとらえる傾向が強い。排出量取引や環境税が導入されても、CO2の直接排出量が多い電力や鉄鋼業界に比べ、電機や自動車業界の負担は限定的。しかも高い省エネ技術を武器に世界展開する商機も期待できる。この差が産業界の複雑な反応を生んでいる。

実効性と格差是正をいかに両立させるか

産業別の負担格差を是正するのはこの先、政治の役割となる。排出量取引の導入に際しても、特に鉄鋼など国際競争にさらされている業種には配慮が必要となるだろう。だが、それはCO2削減効果の実効性との両立が前提。産業界との妥協点を探りながら、いかに実効性のある制度設計ができるか。政府には高いハードルが待ち構える。

COPは今後、「さらに国益が激しくぶつかる交渉になる」(福山哲郎外務副大臣)ことは間違いない。しかし妥協点が見いだしにくいのは、地球温暖化問題が一部の国を除いて、まだ実益を損なうほどの切実な問題としてとらえられていないからともいえる。金融危機のように、まさに国が潰れるというほどの危機感があれば、国際会議で各国が妥協し、合意は形成される。旧環境庁で初代地球環境部長を務めた、NPO法人「環境文明21」の加藤三郎共同代表は、「20年くらいになると温暖化の危機がさらに身に迫ってくる。その頃には多くの国の意識も変わってくるのではないか」と予測する。

1月末に向けて各国の削減目標提示の期限が迫っている。そこで出された数値をベースに、温暖化防止への国際的枠組みをいかにして作り上げるか。利害を超えた合意形成に向け、米中を巻き込んだ具体策の提示を含め、日本ができることは残されている。
 
(野津 滋、安西達也、許斐健太 =週刊東洋経済)

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