COP15で露呈した温暖化阻止への茨道
不透明さを増すCOP16の行方
「完璧ではないが出発点となる」。潘基文・国連事務総長はそう評したが、今会合では法的拘束力のある議定書採択に向けた議論はほとんどされず、「実質的な前進は見られなかった」(西村邦幸・三菱総合研究所主席研究員)と指摘する声が多い。
新たな国際的枠組みに向けた交渉は、11月にメキシコで開催予定のCOP16へ先送りされたが、その行方は不透明さを増している。
排出量取引市場など環境整備を進めてきたEUは、コペンハーゲンで域内での意見の不一致を露呈。このため1月中旬にも非公式の環境相会合を設け、立て直しを図っている。これまでは90年比20~30%減という幅のある目標を掲げていたが、これをどの段階で30%減に引き上げるかが次なる焦点となる。
米国はすでに05年比17%減という中期目標を掲げている。が、その数値が記載されている包括的な排出削減法案である「ワックスマン・マーキー法案」は、下院は通過したものの、上院を通過するメドがまだ立っていない。今年は上院選を控えており、年前半に成立させないと選挙モードに入ってしまうため、新たな数値は出しにくい状況だ。
今後は、温室効果ガスの2大排出国であり、京都議定書で削減義務を課されていない米国と中国をどう国際的枠組みへ導くかが課題となる。ただ米国は一貫して国別の削減義務の設定には反対している。前述の西村氏は「米国が主張している自主参加型の目標方式に切り替えることも必要かもしれない」と指摘する。
一方、中国などの新興国や途上国に対しては、先進国が支援を行った削減についてのみ、国際的な検証の対象となることが合意に盛り込まれた。日本総合研究所の三木優主任研究員は「今後は検証の対象を自主的な削減分に広げられるかが焦点となる」と指摘する。だが中国にとっては経済成長を妨げる負担は避けたいはず。さらに踏み込んだ取り組みには、米国の働きかけが不可欠となるだろう。