トヨタを"超えた"テスラ、上昇続く株価の行方 過剰な期待にはイーロン・マスクも困惑か

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売り上げは雲泥の差がある。トヨタが年間約1000万台(持ち分法適用会社の中国を含む)の自動車を販売するのに対し、テスラの年間販売台数は40万台弱しかない。

利益を見ても月とすっぽんだ。テスラは2010年の上場からこれまで、通期ベースでは一度も黒字を出したことがない。

テスラは近年、量産型セダンのモデル3の生産拡大に悪戦苦闘。ようやく量産が軌道に乗ってきたことで、直近は3四半期連続で黒字化した。とはいえ、利益水準はまだ微々たるものだ。

株価は美人投票であり、実績ではなく期待で決まる。誰も未来を正確には見通せない中、これだけの株価上昇をもたらすのは、マスク氏のすごさともいえる。高株価はそれ自体が力でもある。テスラが赤字続きでも事業を継続できたのは、株式で資金を調達できたからだ(大富豪のマスク氏が自己資金で支えた面もある)。

マスク氏が株高に”警鐘”鳴らす

テスラの評価は難しい。2010年前後に脚光を浴びたEVベンチャーの多くが消えていく中で、テスラは誰もが認めるEVのトップランナーだ。

電気だけで走るピュアな電気自動車(バッテリーEV=BEV)がいつ主流になるかは別として、自動車が電動化に向かっていることも間違いない。テスラでは、長寿命・低コストの充電池の技術開発も進めているという。

反面、電池のコストがかさむEVで高い収益を上げられるようになるのかはまだはっきりしていない。新しい電池技術を開発したとしても、実用化までには隔たりがある。ネット企業と異なり、工場というリアルな設備を増やしていく必要があり、一足飛びに収益を何倍にもすることは不可能だ。

テスラの株価高騰には、世界的な過剰流動性の拡大という外的要因も間違いなくある。マスク氏はこの5月、ツイッターで「株価は高すぎる」とつぶやいた。あまりに高い期待に当惑したのかもしれない。警鐘を鳴らしたものの、そこから株価は約3割も上がっている。

相場の勢いはいつまで続くのか。何かのきっかけで投資家の足抜け(売却)が始まれば、売りが売りを呼び、株価は一気に崩れる。高すぎる株価は、当該企業にとって良いことばかりではないのだが、「それもまた相場」ということなのだろう。
 

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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