人一倍繊細なHSPが自分を知って楽になる方法 武田友紀×大木亜希子「私は私のままでいい」

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――HSPは後天的な気質なのでしょうか?

武田:HSP気質自体は先天的なものですが、HSP気質を持った子が「私は私でいいんだ」という自己肯定感を持てるか、それとも「こんな自分はダメなんだ」と思うかどうかは、家庭や学校など育った環境によるものが大きいですね。

例えば、子ども時代から親が大変そうだから、心配をかけないようにしていて、それが続くと、「嫌だ」「つらい」といった感情を封じ込めるようになります。これは子どもの心理療法・家族療法が専門の大河原美以さんが著書で書かれていることなんですが、怒りや悲しみ、喜びなどの感情は、生理現象として体に起こります。例えば、“怒り”は「はらわたが煮えくり返る」と言いますが、本当にお腹のあたりが熱くなります。小さい子どもは、怒りや悲しみや不安などの強い感情にさらされた時、それがなんなのかわかりません。身体が危険を感じるので、「感じなくなる」「封印する」という防衛で自分を守るのです。

そうすると、「嫌だ、怖い、つらい」ということがなかったかのようにして生きていくことになります。そのような人たちは、客観的に見て酷いことをされている時でも「怒っていいことかわからない」と言います。「その時は嫌だってわからないけれど、あとからちょっとしたきっかけで爆発してしまう」ということも起こりやすくなります。

ネガティブな感情を親に受け止めてもらえない環境で育つと、自分の本当の気持ちよりも相手の気持ちばかりを見てしまい苦しくなる、ということが起こります。

これは別にHSPだからそうなるというわけではありませんが、HSPは子どもの頃から相手の気持ちに敏感で、察しやすいからこそ、自分の気持ちを抑えやすい傾向にあります。

一方で、HSPでも「あなたはあなたのままでいいのよ」という環境で安心して育つと、そんなに人目を気にせず、自分を大事にできるのです。

「親が幸せそうかどうか」を感じたかどうか

――親の影響が大きいのですね。

武田:ポイントは「親が幸せそうだ」とHSPが感じていたかどうかです。

人への恐れが少ないHSPに「親はどういう人ですか?」と聞くと、「親は親で好きなことをやっていました」という回答が多く出ます。親が大変そうだと、子どもは我慢しますから、相手を優先する癖がつきやすい。HSPは良心的で相手を思いやる傾向にありますが、あまりにも相手を優先してしまう場合、それは生まれつきの気質というよりも、後天的に身に着けた「対処法」の可能性があります。

親に余裕がないと、例えば勉強ができることで自分に関心を向けてもらおうとか、何かができることで必要としてもらおうとするので、自分の本心はさておき、頑張ること、結果を出すほうに意識が向きます。そうすると、頑張れるし成果は出せるけれど、どこかずっと不安な気持ちが残っている……という感じになります。

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