介護現場を襲う「マスク」「人材」不足の二重苦 ヘルパーは感染リスクとも常に隣り合わせ
利用控えを食い止めようと、介護現場も必死だ。
NPO法人グレースケア機構(本社・東京都三鷹市)の副所長で介護福祉士の加守田久美さんの事業所では、以前から訪問先での手洗いと、口腔(こうくう)ケアや排泄介助のときの手袋着用、訪問先から帰ってきたときのうがいは徹底していた。
今はそれらに加え、排泄介助などのときだけに着けていた手袋の常時装着、訪問先の室内では手すりを消毒するなどの感染症対策もしている。また、訪問中は密閉した状態にならないよう、窓を開けっぱなしで介護にあたっている。
ただ、加守田さんは「限界がある」とも話す。
「耳が悪い利用者さんは、マスク越しで話しても聞き取れないことが多いので、話すときはマスクを外します。認知症の方は相手の表情を読むので、マスクのままではコミュニケーションがとりにくい。体を密着させる必要のある介護では、ソーシャルディスタンスを取ることはできません。どうやって利用者さんを介護したらよいのか──。試行錯誤を続けています」
介護現場は常に危険と隣り合わせ
そもそも、介護現場ではマスクや消毒用のアルコールなどが足りていない。淑徳大学の結城康博教授(社会福祉学)は、利用者の利用控えについて、介護関係者約500人にアンケートを実施。その調査でも、6割が「足りていない・あまり足りていない」と答えている。政府が介護職員のために用意したのは、布マスクだ。
「利用者に密接してケアをする訪問介護でやることは、訪問看護に近い。感染リスクは同じなのに、医療者にはサージカルマスクで、介護者には布マスクというのは問題だと思います。もう少し政府も注目してもらいたい」(結城教授)
訪問介護に携わるヘルパーは、濃厚接触や感染の疑いで自宅に待機している利用者やその家族の家を訪れるケースもある。