トランプは対中強硬姿勢をこれから強めていく 大統領選へ向け米中貿易合意も揺らぐリスク
ピュー研究所の世論調査(2020年3月)によると66%の国民が中国を好意的に見ていない。そのうち共和党支持者の72%、民主党支持者の62%が中国を好意的に見ていない。共和党のほうがやや多いが、反中感情は党派を問わずアメリカ社会で主流派となっている。
議会でも、過去は産業界に支えられた自由貿易推進派の共和党が対中強硬策に反発していたが、今や、国民の声を反映して超党派で対中強硬策を推進している。めったに政策で合意することがない共和党のマルコ・ルビオ上院議員と民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は対中政策では意見の一致をみている。中国に対する厳格な対策を含む法案への抵抗勢力は議会内に少なく、容易に可決されるだろう。
トランプ政権内でも2018年3月にゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長が去った後は対中強硬策に反対する勢力が衰退した。ピーター・ナバロ大統領補佐官のほか、マイク・ポンペオ国務長官、ロバート・オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)、マシュー・ポッティンジャー大統領副補佐官(国家安全保障担当)などが強硬策を大統領に助言。一方、スティーブン・ムニューシン財務長官、ラリー・クドローNEC委員長など穏健派が強硬派に強く抵抗する気配はもうない。
議会も政権も対中強硬派を抑える力が不在となる中、米中関係は競争関係ではなく、対立関係へとシフトする土壌ができつつある。
トランプ、バイデンとも強硬姿勢をアピール
中国もコロナ対策で初動が遅れ、世界に対する説明も透明性に欠けるなど、確かに問題は多々あった。アメリカの保守派の間では、中国政府のコロナに関わるさまざまな陰謀説まで浮上している。世界が批判する中、中国政府は各国からの信頼を回復することに必死だ。
トランプ大統領とジョー・バイデン候補はそろって中国批判を繰り返しており、どちらがより中国に対して厳しいかを競い合っている状態だ。大統領選では第3の候補は「中国」とも揶揄されている。
バイデン氏は中国に対し融和的な姿勢を見せていた過去があり、トランプ陣営はその点を攻撃している。2019年5月にアイオワの支持者集会でバイデン氏は中国について「競合ではない」と語り、米中対立を過小評価する発言が物議を醸した。トランプ大統領や共和党だけでなく民主党内からも批判され、その後バイデン氏は対中強硬姿勢に軌道修正した。だが、大統領を支持するスーパーPAC(政治活動団体)の「アメリカ・ファースト・アクション」は同支持者集会での発言を含め過去のバイデン氏の中国に対する融和的姿勢について批判するテレビCMを流している。
選挙期間中はいずれの候補も過去の中国に対する融和的姿勢についてお互いを攻撃することが見込まれるため、ますます国民の反中感情は高まるだろう。今後、選挙戦に向けて米中の貿易第1段階合意は見直される可能性もあり、香港自治問題が米中関係のさらなる悪化をもたらすリスクもある。
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