「新型ハリアー」のデザインに見るトヨタの思惑 北米モデルの存在とトヨタマーク採用の意味

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3代目は、ディスプレイやスイッチを収めたインパネのセンター部分が、そのまま斜めにセンタートンネルに下りるデザインで、途中にセレクターレバーが位置する“セミインパネシフト”と呼びたくなるレイアウトを採用し、この部分とパワーウインドースイッチのベースはウッドパネルになっていた。

3代目「ハリアー」インテリア(写真:トヨタ自動車)

また2トーンカラーは、インパネやドアトリムの上面全体に色を与える、派手な出で立ちだった。

それが新型では、センターディスプレイは大型化したこともあってフローティングタイプになり、そこから斜めに下りるのは左右のフィンだけで、セレクターレバーは水平のコンソールに移動した。

ウッドパネルはなく、2トーンの色分けはセンターコンソールとドアトリムにとどまるが、ドアトリムはリアに行くほど色の面積が大きくなっており、ここにハリアーエンブレムが入れてある。

新型「ハリアー」インテリア(写真:トヨタ自動車)

インパネ助手席側などに同色のパイピングを施したことを含め、派手さを抑えながら個性的な装いになった。

北米仕様であるヴェンザのインテリアも、写真で見る限りでは同様である。トヨタブランドの高級ミニバンとして知られるアルファード/ヴェルファイアの路線とは明らかに異なり、レクサスを思わせる仕立てだ。

もともとレクサスブランドとして生まれたハリアーならではと言えばそれまでだが、この点もグローバルモデルへの転身が路線変更に関係したのではないかと考えている。

トヨタブランドで販売する意味

新型ハリアーの価格はまだ発表されていないが、新型コロナウイルスで自動車業界全体の業績が低迷していることを考慮に入れれば、大きく跳ね上がる可能性は低い。そうであれば、ハリアーの価格帯でこのデザインが手に入ることに好感を抱く人は多いはずである。

直近の報道では、コロナ禍で大都市から地方への移住を考える人が少なくないという。多くの地方都市では、日常生活においてクルマが必要になる。

しかし、輸入車ブランドやレクサスは販売店が少なく、少数派ゆえ周囲の目が気になるという声もあるだろう。その点ハリアーは、トヨタブランドなので心配はない。

もちろん、ハリアーにはプレミアムブランドではないことを教えられる部分もある。そのひとつはボディカラーで、7色あるラインナップは多くが普遍的な色だし、スティールブロンドメタリックという微妙な名前のカラーも、プリウスに使われているものと同じだ。

ボディサイズが近いレクサス「UX」や「NX」は、はるかに魅力的な色を揃えており、インテリアカラーの選択肢も多い。「プレミアムブランドとは何か」という答えの一端を見せてくれる。しかし、そういう部分をさほど気にしない人には、新型ハリアーは上質なSUVとして支持されるだろう。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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