「田舎の長男」に嫁いだ女性の想定外すぎる人生 企業勤めのOLが電撃婚、その行方は…

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「翌日、私から電話して会いました。昨日言ったことを覚えてる?と聞いたら、『覚えてる』というので十和田湖までドライブに行ったんです。神社で参拝しました。彼がおみくじを引いたら結果は大吉。それで『(結婚するのは)この人、なんだな』と思ったそうです。彼、お坊ちゃん気質なんですね(笑)」

結婚後も楽なことばかりではない。最寄りのスーパーまで車で30分もかかるという地域で、「長男は絶対に家を守らなければならない」という感覚が強固に残る。佐和子さんは元気な姑との3人暮らしに突入した。

「義母は家事を一切せずに遊び回っています。『こういう人なんだな』と思えば腹も立ちません。40代にもなると、いろんな人との付き合い方がわかってきますよね。会社員時代はわがままな上司と一緒に働くことも少なくありませんでした」

結婚後、日を追うごとに秀一さんへの愛情が増しているという佐和子さん。彼のどんなところが好きなのだろうか。

「自分がコレと思うこと以外は私が何をやっても構わないところがすごく好きですね。男友達と食事に行っても平気ですし、毎週末は私の実家がある町まで泊りがけで習い事に行っています」

週末婚ならぬ平日婚である。秀一さんはとにかく「仕事の鬼」であり、会社経営に関することだけは誰にも譲らない。土日も自分は仕事をしたいので、佐和子さんが自由に行動することは問題にしないのだ。なお、かつて派遣会社で勤務していた佐和子さんの発案で、結婚生活は「1年ごとに更新」している。

「この1年のよかったこと、悪かったことを伝え合います。次の1年もどう過ごすつもりなのかをご提示ください、というノリです」

同じ方向を見て走りながら、支え合う2人

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メリハリのある夫婦関係だからこそ、一緒にいるときは仲良くできるのかもしれない。車は1人1台が当たり前の場所に住みながら、自家用車は1台のみ。どこに行くにも2人一緒だ。

「夫の父親を仕事中の事故で亡くしているので、自ら運転手もしている彼が家から出るときは、必ずハグしてキスしています。もし最後のお別れになっても悔いが残らないように、でも絶対何があっても帰るおまじないとして……。夫は仕事が大変な時期もあり、車中泊が続いたこともあります。今でも、忙しいと土日も関係なく働いています。会える時間を大切にしているから、ラブラブにお熱く見えるのだと思います」

佐和子さんが管理業務を担うようになり、秀一さんが経営する運送会社は社員数を倍増させ、トラックはすべて新調した。佐和子さんは「V字回復だ」と誇り、秀一さんは「レ点にもなってないよ」と返す。ほほ笑ましい応酬だ。

見つめ合って求め合うのではなく、同じ方向を見て走りながら支え合う種類の愛情がある。それは「嫌ではない」相手とならば育めるものかもしれない。だからこそ、想定外のことも許容して前に進める。ありきたりの出会いを拾い上げ、我慢すべきことは我慢して、かけがえのない関係へと昇華させていくのだ。それが結婚なのだと思う。自らの人生を切り拓き続けている佐和子さんに拍手を送りたい。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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