参加したのは男性10名。女性は幹事と佐和子さんのみ。幹事の女性以外は全員が独身。佐和子さんを囲む会、といった雰囲気だった。秀一さんも参加していて、仕事の話を少し交わした。
「お互いにどうして結婚しないのか、という話になりました。彼はお父さんが運送業に失敗して負債を抱えていて、同窓会の前年には事故でそのお父さんを亡くしています。傾いた会社を引き継いだ彼は結婚どころじゃなかったそうです」
語り口はソフトで、顔は薄めの秀一さん。男性として「嫌ではない」と感じたと佐和子さんは振り返る。逆に言えば、その程度の感想だった。20代の頃は居酒屋でアルバイトしていた秀一さんは任された料理番に忙しかったようだ。
実は、そのBBQを取り仕切ったリーダー格の男性が佐和子さんに同窓会で一目ぼれ。周囲に「会いたくて仕方ない」と言い触らしたので実現した企画だった。しかし、面と向かうと彼は佐和子さんをデートに誘わない。
「1年後の夏にも同じように集まりました。それまでの間、友達と一緒にいるときに電話がかかってきたりもしたんです。でも、本人からちゃんと誘われたことはありませんでした。私は直球ストレート派なので、『デートぐらいは付き合うから、ちゃんと自分の口で言ってよ!』と抗議したんです」
それでもリーダーは煮え切らない。周囲が大喜びしながら叱咤激励する様子が目に浮かぶようだ。秀一さんも一緒になって笑っていたらしい。平和な光景である。
一緒の帰り道で…
佐和子さんの祖母がいる家と秀一さんの実家は、徒歩で行き来できる距離にある。その日は2人で途中まで一緒に帰った。
「リーダーと付き合うのか、という話になりました。『食事ぐらいなら誰とでも行けるけれど、その先は別。結婚はできない』と言ったんです。そうしたら、秀一さんから『じゃあ、オレと付き合うか?』と言われたんです。なぜそういう展開になるのかわかりませんけど」
佐和子さんはど真ん中のストレートが来たらバットを振らずにはいられない性格である。
「結婚が前提ならいいよ。この年齢まできたら、付き合う時間は無駄だから」と答えた。秀一さんの返事はYES。
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