電通業績不振、コロナと給付金騒動が追い打ち 五輪延期も打撃、本社の爆破予告まで発生

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さらに深刻なのが海外だ。電通は2013年にイギリスの広告大手イージスを約4000億円で買収し、以降も毎年数十件のM&Aを実施しながら拡大を続けてきた。だが、2019年初めから中国やオーストラリアで大口顧客の失注が相次ぎ、アジア太平洋地域の売上総利益は2019年4~6月以降、4四半期連続で2ケタの減少が続いている。

「中国では市場の成長を牽引する現地企業を取り込めていない。BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)との関係も不十分。オーストラリアは顧客だけでなく、この1年ほどで社員の流出も相当あった。ただ経営陣を刷新し、悪いスパイラルからは抜け出しつつある」(前出の電通グループ幹部)。

遅れるデジタルマーケティング対応

業績低迷を受け、電通グループは2019年12月期にアジア太平洋地域でのれんの減損約700億円を計上。さらに、中国とオーストラリアを含む7カ国で大規模なリストラを実施した。総費用約250億円をかけ、対象国の11%の人員削減やいくつかの拠点から撤退した。

これらの国では日本のマス広告のように、広告会社がメディアの枠を買って、広告主に売るという旧来型のビジネスモデルに偏っていた。さまざまな消費者に関するデータを活用したデジタルマーケティングへの対応が遅れており、それへの転換を急ぐ。

デジタルへの転換を業績にうまく結びつけられたのが北米だ。北米を含む米州は、9四半期連続で増収を続けている。特に電通が強くアピールするのが、2016年に約1000億円で買収したアメリカのデータマーケティング会社・マークルの存在だ。

同社は、広告主が持つ消費者の名前やメールアドレスを含むIDデータを活用し、そのブランドのファンになってもらうために広告や販促のターゲティングを行うためのツールを提供する。

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