雇用調整助成金については、認可保育園など給与に公費が充てられている職種(保育士や調理員など)は対象外となる。ただ、認可保育園や認定こども園などでも人件費のなかで明示されていない職種、認可外保育園、施設型給付費や地域型保育給付費以外で実施する地域子ども・子育て事業は、雇用調整助成金の対象になる可能性があり、個別に都道府県やハローワークに問い合わせる。
一方の小学校休業等対応助成金は、公定価格とは趣旨が異なり、要件を満たす認可保育園の事業者は助成金の申請ができる。ただ、そもそも公定価格で施設の収入が保証されていることから、「助成金の活用にあたっては代替要員の人件費など追加的な費用に充てるなどして、人件費の支出は適切に対応するのが望ましい」と書かれている。
延長保育を理由にする園もあるが…
このような制度があるため賃金カットを行う理由はないはずだが、保育園によっては「委託費は守られたとしても、延長保育など利用実績に応じて受ける補助が大きく減る」ことを心配し、賃金カットの理由にするケースもある。しかし、延長保育などについても国は目を配っている。
延長保育、一時預かり、病児保育事業への交付金について、内閣府と厚生労働省は連名で4月17日に「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う子ども・子育て支援交付金の取り扱いについて」という事務連絡を行い、保育園の収入が減らないよう配慮している。
延長保育、一時預かり、病児保育の事業は、自治体が1年単位で民間事業者へ委託し、職員の雇用が行われるため、コロナで減収となっては影響が出てしまう。そこで、コロナの影響で事業が実施できなかった場合でも、利用者の家での見守り、利用予定だった保護者へ電話で相談支援するなど、できる限りの支援を行ったと市区町村が認めた場合は、通常の利用と同等のサービスをしたとみなして補助が受けられるようになっている。
ほか、保護者が病気になったときや育児疲れのときにも利用できる「ショートステイ」、仕事で夜間や休日に利用できる「トワイライトステイ」をはじめとした、市区町村が行う子育て関連事業も、すでに雇用していた職員の人件費など、実際に事業者の負担が発生する経費は担保される。
ちなみに、「コロナ対策で消毒液などの出費がかさむ」ことも賃金カットの理由にされやすいが、厚生労働省は3月10日、感染対策で物品を購入する費用の補助を決めている。自治体が窓口となり、認可保育園、幼保連携型認定こども園、認可外保育園などは、1施設当たり50万円を上限に、子ども用マスク(不足があれば大人用マスクも可)、消毒液、体温計、空気清浄機、液体石鹸、うがい薬などを幅広く買うことができる。国内で初めて感染者が確認された2020年1月16日から、今年度内の購入費用が対象となる。
だからこそ厚生労働省は5月29日、前月の内閣府通知に重ねて通知を出し、登園自粛で園児が減った場合の職員の賃金と年次有給休暇の取り扱いについて、より強いトーンで注意喚起したのだろう。
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